らいか

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118件のレビュー

レビュー

アンディ・ウィアー「プロジェクト・ヘイル・メアリー 上」読了。 今度映画化されるということで気にはなってたが、ハードカバーなので手を出しかねていたやつ。劉慈欣の三体を貸している友達から、貸してもらってる代わりにこないだ買ったこれ読む?といわれたので、即答で読む!と言って借り、そしてさっき友達に、明日絶対下巻持ってこいよと念を押した。 うん、噂通り面白い。 そして噂では映画化で映像になってしまうとそれだけでネタバレだというのも聞いたのだが、この上巻ではそこまでの内容はまだ出てきていない気がする。 1番最初の主人公のグレースが目覚めてどこにいるかわからないやつか?とも思ったが、いやいや本の1番最初に見開きで宇宙船の図解が乗ってるからそれじゃないよなと。なんだろう。気になるので早く下巻を読みたい。 とりあえず今の所なにがいいって、主人公のグレースが良い。頭が良くて粘り強くて諦めなくてポジティブで知的好奇心が強い。こういう主人公大好きだな。調べてみるとこの本の作者さんって映画のオデッセイの原作の人なのね。なるほど、オデッセイのマット・デイモン演じる主人公も同じような感じで良かった。これ読み終わったら、オデッセイの原作「The Martian」も読んでみようかな。

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プロジェクト・ヘイル・メアリー 上

プロジェクト・ヘイル・メアリー 上

アンディ・ウィアー/小野田 和子

今村翔吾「イクサガミ 神」読了。 終わってしまった。蠱毒が。 そう、わかってはいた。蠱毒の性質からそうなることは。でも、残って欲しかった人たちが沢山。 京八流、朧流、響陣、ギルバート、カムイコチャ、無骨、進次郎...まだまだいる... このイクサガミはほんとキャラクターたちが魅力的な人物ばかり。たくさんのキャラクターが登場するのに、これ誰だったっけ?ってなる人が1人もいない。キャラが全員ちゃんと立ってるんだよね。すごい。 出てきたキャラクターで全てサイドストーリー作ってったらエンドレスで物語が作れるんじゃなかろうか。 イクサガミ。全4巻。楽しゅうございました。 さあNetflixのドラマ版を待ちましょう。

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イクサガミ  神

イクサガミ 神

今村 翔吾

今村翔吾「イクサガミ 人」読了。 おおおおおぉぉ。熱い。熱いぞぅ!! この終わり方!!良い!!いいぞぅ! 最終巻を!最終巻の「神」を早うもって参れ! (もちろん既に持っている) 二百九十二名いた蠱毒の参加者も 此の巻ではもはや二十三名。 どいつもこいつも曲者、手練れ、天才揃い。 そしてどの戦いも熱い。 それなのに尚もそれを乗り越えてくる ラストの熱さ。もうこう言う展開すっき!! あのね、熱い男達が熱い男達のために一致団結して燃えるって展開はね、熱いのよ! この最後の辺りはもう文章を読んでるのに頭の中では映像が流れてるのよ。だれか!俺の脳内を映画化してくれ! 出てきたキャラの中で今んとこ1番好きなのはやっぱり甚六かなぁ。でもぎるばーともすてがたいしなぁ。いや、陸乾もいいけど、カムイコチャも捨て難い...ああ!みんな違ってみんないい! ということで、いよいよ最終巻!! 「イクサガミ 神」いってみよう!!

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イクサガミ  人

イクサガミ 人

今村 翔吾

桜庭一樹「GOSICK Ⅳ 愚者を代弁せよ」再読了。 桜庭一樹作品読み直し。ゴシックシリーズ第4段。 アヴリルの乙女心が爆発回。でも三角関係にはならないのよね。なぜならヴィクトリカと一弥の間には入る隙間がないから。可哀想なアヴリルちゃん。 メインの謎解きはと言えば、今回は過去からの挑戦状。時計塔の魔術師リヴァイアサン。その魔術師が残した謎とは。そして魔術師は未だ生きているのか、それともんでいるのか。呪いの正体とは...といった感じ。 そしていよいよ魔術師のあいつ、ブライアン・ロスコーが本格始動。物語は佳境へと突入を始める。 さあ次行ってみよう。

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GOSICKIV-ゴシック・愚者を代弁せよー

GOSICKIV-ゴシック・愚者を代弁せよー

桜庭 一樹

ピエール・ルメートル「死のドレスを花婿に」読了。 本の紹介文ではカミーユ警部シリーズである「その女アレックス」の原点と書いてあったので、てっきりシリーズのスピンオフかと思ったのだが違った。でも読み終わってわかる。確かにこれは「その女アレックス」の原点かもしれない。 構成は「ソフィー」「フランツ」「フランツとソフィー」「ソフィーとフランツ」の四章立て。 最初の章「ソフィー」では、ソフィーがシッターとして働く家庭の男児を殺してしまうところから始まる。しかしソフィーには本当に男児を自分が殺したかわからない。なぜなら、これまで記憶にない行動をたびたび繰り返すようになってしまったから。果たして自分は狂ってしまったか...そしてとうとう人を殺してしまったのか... からの、2章「フランツ」からギアチェンジ。 一気に物語が加速する。 そして3章、4章... いやはやすごい...すごい駆け引きだ。 これだからピエールルメートルはやめられない。 ピエール・ルメートル今後も要チェックだね。 でももうカミーユ警部シリーズはないだろうなあ。

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死のドレスを花婿に

死のドレスを花婿に

ピエール・ルメートル/吉田 恒雄

桜庭一樹「GOSICK III 青い薔薇の下で」再読了。 桜庭一樹作品読み直し。ゴシックシリーズ第3段。 今作は、ヴィクトリカが初めて風邪を引いてしまう。一弥はというと、学園からちょいと離れた街ソヴュールまで、お土産を買いにでる。本当はヴィクトリカと一緒に行きたかったが、風邪を引いてるので1人で初めてのお出かけ。そして案の定、事件に巻き込まれる。 ということで、今回ヴィクトリカは完全なるアームチェアディテクティブならぬ、ベッドディテクティブ。熱でうなされながらも電話で聴いただけであっという間に謎を解く。 まあでも、今回は謎解きはそんなに難しくなかったかな。謎よりもストーリーが面白いので、いいのである。あと、グレヴィールの髪型がなぜ尖っているのかの秘密も明かされる。可哀想なグレヴィール。グレヴィールの部下が手を繋いでるのもそんな理由だったとは。(再読だから知ってたけどね)

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GOSICKIII -ゴシック・青い薔薇の下でー

GOSICKIII -ゴシック・青い薔薇の下でー

桜庭 一樹

ピエール・ルメートル「わが母なるロージー」読了。 タイトルで誤解していた。カミーユの母のお話で、悲しみのイレーヌで妻を亡くし、傷だらけのカミーユで心をズタズタにされたカミーユがまた悲しい目に遭うのかと。 ちごた。 今回の作品に登場する爆弾を仕掛けた犯人の母親の事だった。だって「我が母なる」っていうから勘違いしちゃうよね。 閑話休題 本作品はカミーユ警部3部作の完結後に発売された番外編。でも時間軸的には2作目と3作目の間。こんな事件があってたんだね。 しかし番外編とはいえど、本編に負けず劣らず面白い。章立ては3作目の傷だらけのカミーユと同じく、1日目・2日目・3日目と区切られる。 が、今回は爆弾が爆発する時間が近づくため否応なく緊迫感が増す。 ピエール・ルメートルめ、作り方上手いなあ。 最後も上手い。だが、謎は残る。 でもこれは全て説明すると多分 興醒めになると思うから、 この終わり方でよかったんだと思う。 さあ、残り一作。 「死のドレスを花婿に」を読もうかね。

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わが母なるロージー

わが母なるロージー

ピエール・ルメートル/橘 明美

桜庭一樹「GOSICKⅡ その罪は名もなき」再読了。 桜庭一樹作品読み直し。ゴシックシリーズ第2段。 この作品では、ヴィクトリカの母親コルデリア・ギャロの話が出てくる。灰色の狼と呼ばれ天才的な頭脳を持っていたが、故郷の村から殺人犯の疑いをかけられ追放されたコルデリア。その疑いを晴らすためにヴィクトリカと一弥が村へ乗り込む。 ゴシックシリーズはほんと読みやすい。さくっと読めるのだが、ちゃんとミステリーとして読み応えはあるので楽しい。 少しずつ一弥とヴィクトリカの距離が縮まっていくのも良いのよ。お互い憎まれ口を叩き合いながら、もはや無くてはならない存在になっているのよね。 村の長老の占いの結果の下りもとても好き。 さあ、次に行ってみよう。

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GOSICK(2)

GOSICK(2)

桜庭 一樹

ピエール・ルメートル「傷だらけのカミーユ」読了。 「悲しみのイレーヌ」「その女アレックス」、 そしてこの「傷だらけのカミーユ」が カミーユ警部3部作の最後を締めくくる。 悲しみのイレーヌで悲しみのどん底に叩き落とされたカミーユが、やっとアレックスの事件で少し復活したと思ったら、傷だらけにさせられるのかいとタイトルを見て想像してたのだが、うん、読み終わって納得。確かに傷だらけだわカミーユ。 今作は時間軸が3日間と限られてて、1日目・2日目・3日目の3つの章立てになっている。そしてその章の中が何時何分といった感じに分けられてるので、すごくスピード感があった。なんかリアルタイムでカミーユと一緒に時間を過ごしていっているような感覚になる。 しかしこのシリーズは悲しくて辛いんだけど、抜群に面白い。「その女アレックス」が一番面白いのは間違い無いんだけど、この3部作は3つ揃って初めて1つの作品なのかも知れない。アレックスしか読んでない人は他の2作も絶対読んだ方がいい。それもちゃんと順番通りに。 いやはや、シリーズ最後を締めくくるに相応しい話だった。正直犯人が誰なのか読めなかった。でも読み終わったいまはわかる。そうだよねって。 しかし、この表紙の意味は一体なんだろう。 内容と関係ない気がするのだが...

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傷だらけのカミーユ

傷だらけのカミーユ

ピエール・ルメートル/橘 明美

桜庭一樹「GOSICK」再読了。 久しぶりに桜庭一樹作品を読みなおしていきたくなったので、まずはこの作品から。ライトノベルになるのかな。 ヨーロッパの小国ソヴュールに極東の島国から留学してきた一弥と、学園にある図書館の塔に軟禁されているビスクドールのような見た目だが、天才的な頭脳を持つ少女ヴィクトリア。この2人がさまざまな事件に遭遇し解決していくミステリー。 2013年の小説なので、もう22年も前の作品。 でもやっぱり面白い。ヴィクトリカのツンデレと一弥の真摯なイジられ役の掛け合いが微笑ましい。 シリーズ最初とあって、登場人物の紹介編のような部分もある。アヴリルとかセシル先生とか、ブロワ警部と2人の仲良し部下とか。シリーズに欠かせないサブキャラクターたち。ああ、懐かしいなあ。

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GOSICK -ゴシックー

GOSICK -ゴシックー

桜庭 一樹

高田大介「記憶の対位法」読了。 難しい、難しい。 自分のこれまでの知識を総動員しても 文章についていくのに精一杯だ。 なのになんだこの面白さは。 知見が広がる。 知的好奇心がくすぐられる。 知識が増える。 たまらない。たまらないぞこれ。 戦争、差別、宗教、思想、そして音楽。 これだけのものをよく一冊の本の中に 詰め込めたものだ。 驚嘆しかない。 最初の方は主人公ジャンゴの祖父の話。なぜ祖父は対独協力者と断罪されたのか。ここで第二次世界大戦時のドイツとフランスの関係性の説明がある。これはしばらく前に「同志少女よ、敵を撃て」を読んでいたので比較的スムーズに理解できた。同志少女はドイツとロシアの関係で東側の話で、今回は西側の話なのねと。そのおじいさんが残した黒檀の小箱。それは一体何を意味するのか。 次にイスラム教とイスラム原理主義のテロに対する話。ジャンゴとその上司であるレオンが差別の考え方で議論を交わす。ジャンゴと同じ様に自分自身もいろんな物事は基本的には中立で見ようとしていた、いや見ているつもりだった。しかし、レオンの話を聞くと、差別とはいったいなんなのだろうかと思ってしまう。それともうひとつ「記憶の法律」。これも初めて聞いた言葉。記憶とは。歴史的に正しい記憶とは誰が決めるべきものなのだろうか...難しい問題。考えさせられる。 祖父の謎と、新聞社での仕事と、友人が受ける不当な差別に対する憤りなど、様々な想いが重なり混ざり合いながら、ジャンゴが子供の頃から馴染みのある聖堂をみて改めて感じる想い。 ここに「神を信じたもの達がいた、居続けた」 そしてその想いが石造りの大聖堂を建てさせたのかという感銘。到底一代では築き上げることのできないような巨大な建築物を何代にも渡って作る、作らせ続けるほどの想い。 更にその中で響く「教皇マルチェルスのミサ曲」。 ジャンゴと同じようにネットで検索して聴いてしまった。聖堂の中で音が跳ね返り幾重にもなって跳ね返った音の重なりと輪唱(カノン)による音の重なり。それら全てを計算してハルモニアが作られる。これまでミサの歌は聴いたことぐらいはあったけど、いやはや。こんなにも深いものだったなんて。 そしてタイトル「記憶の対位法」。 ここに集約するのか。鳥肌が立った。 これは「まほり」を読んだ時と同じ感覚かも。 たった一文に鳥肌が立つ。 すごい。すごい小説だ。 でも決して万人には勧めないかも。 何しろすごい密度なのだもの。

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記憶の対位法

記憶の対位法

高田 大介

桜庭一樹「道徳という名の少年」読了。 前半は連作短編が五編。 道徳(ジャングリン)と名付けられる少年にまつわる童話のような夢物語のようなでもどこかでリアリティのある不思議なお話。それぞれの話は独立した短編でも成り立っているし、続けて読むと連作短編にもなっている。上手いよなあ。 そしてやっぱ桜庭一樹の文章が好きだなと 改めて感じる。 後半は桜庭一樹の7つのタイトルに関する インタビュー集。作品は、 「少女七竈と七人の可愛そうな大人」 「赤朽葉家の伝説」「私の男」「GOSICK」 「ばらばら死体の夜」「傷痕」「無花果とムーン」 もちろん全部既読だが、随分前に読んだのもあるので忘れてる部分もある。なのでこのインタビューを読んで、またもう一回読んでみようかなと思った。

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道徳という名の少年

道徳という名の少年

桜庭 一樹

「作家の放課後」読了。 本棚を眺めていたら、まだ読んでないことに気づいたこの本。yomyom 編集部による色んな作家さんの体験記。あまりこういったものは買わないのだが、作家のラインナップみてわかった。目的は森見登美彦だ。なるほど。 作家さんの数は総勢22人にも及ぶのだが、読んだことある人の方が少ない。森見登美彦以外に読んだことがある人といえば、万城目学、中島京子、角田光代ぐらい。あとは名前は知ってるか聞いたことあるかなあ。もちろん知らない人も。 でも、こうやって色んな作家さんの文章を読むのもなかなか楽しい。 そして思う。文章が頭の中にすらすら入ってくる人と、そうでない人の違いがあるなと。 それは文の上手い下手とかではなく、その人の考え方だったり、単語の使い方だったり、文章の構成だったり、表現の仕方とか、感性とが合うか合わないかなんじゃないかなと思う。 これまで読んだことない人で、すらすらと頭に入ってきた人は辻村美月かな。今度何か読んでみようかな。 体験記の中で興味深かったのは、ボーイスカウトの話と坐禅の話と断食の話とボルダリングの話。 たまにはこういうやつ読むのなんかいいね。

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作家の放課後

作家の放課後

yom yom編集部

三津田信三「厭魅の如き憑くもの」再読了。 ずいぶん昔に読んだやつ。刀城言邪シリーズの第1作目。もうかなりシリーズが出ているのだが2作目までしか読んだことないので、改めて1作目から読んでいこうかと思い再読。 うっすらとした記憶で読み進めながら、ああそうだったそうだったと思い出してくる。ホラーと呼んでいいのかミステリーと呼んでいいのか、2つを融合させたような作品。作者もそのような作品を作りたかったのだとも聞く。 山深い村で起こる憑き物の恐怖と連続殺人事件。 二つの旧家の織りなす関係性。金田一耕助シリーズのようなおどろおどろしさに近いのかな。それよりももう少しホラー寄りなのかも。 面白い。面白いのだけど、 谺呀治家と神櫛家の相関図をすんごい何回も行ったり来たりして把握しないとよくわからなくなってしまう。あと谺呀治家のサギリよ。どのサギリかよくわからなくなってしまう。刀城言邪もそう言っていたのでこれはしょうがないと思う。 さて次は「凶鳥の如き忌むもの」にいってみようか。

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厭魅の如き憑くもの

厭魅の如き憑くもの

三津田 信三

講談社「Story for you」読了。 コロナ全盛の時期にwebサイトに公開された 、62名の作家による短編集。1人あたり約3ページのとてもとても短いお話。この62名の中に大好きな作家さん達がいたのでそれを目的に購入。全体的にコロナの全盛期の時期に執筆されたとあって、内容はそれを扱ったものが多かった。 特に好きだったお話から少しだけ感想を。 浜口倫太郎『憧れのファーストキス』 「残像でいける!」は名台詞。いけねえよ。 阿部智里『祖母の衣桁』 「突然突風が吹いた」という一文からの表現が素晴らしく、主人公と一緒に飲み込まれた。 三津田信三『友だちの家の離れ』 3ページでしっかりホラー。ゾワリとする。怖い。 高田大介『鍵』 図書館の魔女シリーズを読んでるものには、くぅっ!!って言いたくなるお話だが、全く知らない人からするとなんのことやら全くわからないだろうなと。ほんの数ページだけだけど、あの2人に会えて嬉しい。 森見登美彦『花火』 別格。このページ数で、不思議さ、怖さ、懐かしさ、色んなものが含まれてる。文章のリズムと今ってなぜだか泣きそうになった。大好きだ。胸が締め付けられる。なんだこれ、たった3ページだぞ。なんだこれ。

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Story for you

Story for you

講談社

道尾秀介「鬼の跫音」再読了。 そう、再読了だった。家の本棚に置いてあって、あれ、もしかしてこれまだ読んでないかもと手に取りパラパラとページをめくって確認し、やはりいまひとつ読んだ覚えがなかったので読み始めたところ「ああ、これ知ってる。読んだわ」となったが読みだしたら止まらないのが小説とかっぱえびせん。短編集な事もあってそのままサクッと読み終えました。 「鈴虫」「ケモノ」「よいぎつね」「箱詰めの文字」「冬の鬼」「悪意の顔」の六篇。なので「鬼の跫音(あしおと)」という話は出てこない。「冬の鬼」の冒頭に「遠くから鬼の跫音が聞こえる」という一文があるだけ。でも、六篇ともに確かに鬼の跫音を感じる。 そしてどれもこれも後味が悪い。 口の中にザリっとした感触が残る感じ。 こう書くと面白くなさそうに思われるかもしれないが、ちゃんと面白い。と言っていいのかな。なんだろ、読むのをやめられない感じ。個人的には「ケモノ」と「箱詰めの文字」が好きかな。

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鬼の跫音

鬼の跫音

道尾 秀介

森見登美彦訳「竹取物語」読了。 誰もが知っている「竹取物語」を大好きな作家である森見登美彦が現代訳したもの。 有名すぎる話なのでほぼ内容は知ってると思ってたのだが、物語の最後で驚いた。 月に帰るときに、かぐや姫がお爺さんとお婆さんに不死の妙薬を渡すのだけど、貰った不死の薬を誰も飲まないのよ。爺と婆はまだしも、帝さえも飲まない。飲まないどころかかぐや姫に会えないのであれば不死になっても意味がないと燃やしてしまうのである。なんて純粋な人たちだ。どこの国とは言わないが、この不死の妙薬をめぐって血みどろの奪い合いが始まってもおかしくないのに、燃やしてしまうとはなんと言う心意気。 と思ったのだが、よく考えるとそうか、帝がそんなよくに塗れていてはダメだよね。たぶんこの時代の帝といえば神にも近い存在だから、そんなよくに塗れた姿を物語に描いたらこっぴどく怒られちゃうよね。 あと、月の迎えのものたちの能力がすごくてびっくりする。この時代にこんな能力者が描けるとすごいよね。全ての人の攻撃性をなくすわ、閉めた襖は全部ずばーんって開け放すわ、もう全能感抜群。そして衣を着せると月人の人格になってしまうとか。なんかすんごいちゃんとしたSFなのよ。 竹取物語、一読の価値あり。

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竹取物語

竹取物語

森見 登美彦

ピエール・ルメートル「その女アレックス」再読了。 すごい。やはりこの本はすごい。 再読して再認識させられる。すごい。 そしてやはりこう叫びたくなる 「アレーーーーーッッックス!!!」と。 最初にこの本を読んだ時には、主人公であるカミーユってなんか影が薄い気がしていたのだが、ちゃんと前作「悲しみのイレーヌ」を読んでから臨むと、カミーユ、おまえよく戻って来たなと褒めてあげたい気持ちになる。そしてお馴染みのメンバーである腐れ縁のル・グエン、ケチンボのアルマン、そしておぼっちゃま刑事ルイ。前巻ではおまえを疑ってすまなかった。だってなんかいいやつ過ぎて怪しかったんだもの。あとアルマンも前巻ではケチ過ぎて地道意外良いとこ無しだったのだが、今作で大好きに。 いやーしかし、ほんともっかい言うが この本は、すごい。最初から最後まで圧巻。 ミステリ好きには間違いなくお勧めします! このカミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズは、本作「その女アレックス」から読み始めてもいいと言うが、個人的には絶対ちゃんと最初の「悲しみのイレーヌ」から読んだ方がいいと思います。話はわかるかもしれないが、登場人物たちへの思い入れがまったく変わります。

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その女アレックス

その女アレックス

ピエール・ルメートル/橘 明美

ピエール・ルメートル「悲しみのイレーヌ」読了。 カミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズの第1作目。第2作目の「その女アレックス」が抜群に面白かったので、このシリーズを全部読んでみたくなり手を出してみた。そのため、イレーヌが誰で最後どうなってしまうかは知っていた... 知ってはいたのだが...これは... 悲し過ぎるよ...カミーユ警部... 最後あたりは、車を猛スピードで運転するカミーユ警部と同じぐらいの速度で一気に読んでしまった。 やはりこういう小説を読んだ時に面白いと言っていいのだろうかと考えてしまう。いや、間違いなく面白いのだが、こう、ね。仕事のとき昼ごはん食べながら本を読むのが好きなので、いつもそうしてるのだが、この小説はちょっと躊躇してしまう部分がちょいちょいね(察して) ということで「その女アレックス」を再読する準備はできた。いってみよう。

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悲しみのイレーヌ

悲しみのイレーヌ

ピエール・ルメートル/橘 明美

高田大介「図書館の魔女 高い塔の童心」読了。 図書館の魔女シリーズを読むたびに思う。 ああ、また読み終わってしまった... と。 正直読み終わりたくない。この世界にずっと浸っていたい。マツリカやハルカゼが何を思い、何を話すのか。読み終わると会えなくなってしまう。でも読まないと会えない。これぞ山嵐のジレンマ。 それぐらいに大好きな小説がこの図書館の魔女シリーズで、その最新刊がこの「高い塔の童心」である。 童心と書いてある通り、マツリカが高い塔に来たばかりのまだ幼い頃の話であり、つまり高い塔の中心は先代タイキが居座っている時のお話である。 シリーズの読者には言うまでもないが、タイキと言えば、起こらなかった第三次同盟市戦争の立役者。今作で書かれている「起こらなかったことに捧げられる詩行はない」。この言葉にハッとさせられた。いつも歴史に残されるのは起こったこと。起こらなかったのであれば歴史には刻まれない。なぜ起こらなかったのかについては気にするものはいない。だって戦争は起きなかったのだから。唸った。そんな視点があるとは。そしてのちに語られるタイキの怒りを知ったときの苦しさ。たまらない。胸が締め付けられる。言葉が柔らかいだけに尚のこと。 そして今作は、マツリカとハルカゼの出会いの話でもある。まだハルカゼが手話を少ししか理解できずマツリカの言いたいことがわからずもどかしい思いをしているハルカゼ。まだ笑い上戸にもなっていないハルカゼ。いつなるのだろうか。まだ図書館に遣わされたばかりだから心を開いてないのだね。でもそんな2人の最後のシーン。自然と顔が緩んでしまう.... ああ!!まだまだもっと読みたい!! 霆ける塔が待ち遠しい!! あとキリンとの出会いも知りたい!! お願いします!!

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図書館の魔女 高い塔の童心

図書館の魔女 高い塔の童心

高田 大介