ちりめんじゃこ

ちりめんじゃこ

101件のレビュー

レビュー

今のわたしが読むべき本。アラサーのすべてが詰まっている。結婚相手に商社マンなどを高望みしてしまうアラサー女の習性に対し、「人に頼ると結婚半ばで辛くなってくるので自分でどうにかした方が早い」が印象的。

0
そろそろいい歳というけれど

そろそろいい歳というけれど

ジェラシーくるみ

マジョリティの暴力性について考えさせられる。自分が正しいことを疑わない、また正しくあろうとすることは、ときに世界を狭小化させている。

0
正欲

正欲

朝井 リョウ

難解すぎる。最後に伏線はすべて回収してあったが、あいだでは規模感がわからずついていけない。階梯は意識レベルであり、我々の階梯では理解できない高次的なものであるので、何を言っているのか理解できないことこそが今回の物語の大事なポイントではあるだろうが。大変哲学的で、ことばは比較的平易かもしれないが概念の理解が全く追いつかない。マツラは合格したことで階梯を昇り時間旅行の管理者となり、松浦が宇宙船内でエルマに妊娠させた子は空襲中の神戸で成長し野々村となり、時間旅行の自由を唱える反逆者となった。ほとんどわからないし、全てが言葉で説明されているわけでないのが難しい。おそらく複数回読み込まないとわからない。

ネタバレを読む

0
果しなき流れの果に新装版

果しなき流れの果に新装版

小松左京

上よりも映画の内容から乖離してきた。俊介が死んでからの喜久雄は、芸で競える相手はおらず孤独ながら、芸の中だけで生きてきた。喜久雄を取り巻く周りの人々、春江、綾乃、竹野、一豊、彰子など、全員が皆人間らしく意地汚く生きているのと相反して、喜久雄は人間らしさから離れていく。父を殺した辻村に対しての"ああなりたい"ということばは、人間を超越した喜久雄の心境を表していた。

0
愛蔵版 国宝 下 花道篇

愛蔵版 国宝 下 花道篇

吉田修一

映画では、喜久雄は歌舞伎にしか興味がなくそれ以外には熱量のない冷めた人柄の印象があったが、本書では違った印象であった。喜久雄が一人称で物語が進行しているため喜久雄の感情は常に描写されており、人間らしく生々しい印象を受ける。歌舞伎が好きでそれ以外は内向的ではあるが、友人たちと親密にしていたり、市駒ともお互い納得した上で結納していなかったり、人間らしいあたたかさは持ち合わせている。俊坊がいなくなったあとの喜久雄も、三代目半二郎を継いだとはいえ名前に見合った出世道には乗っておらず、やはり2人で藤娘を踊っていた未成年期がいちばん喜久雄にとって幸福であったことは、徳次の「俊坊がいなくならなければ喜久雄もここまではならんかった」という発言で回顧させられる。寧ろ戻ってきてからの俊坊こそよそよそしく、喜久雄の歩み寄りを無下にする冷たい印象を受ける。映画での喜久雄は誰にも頼らず孤独であるが、徳次やそのほか友人たちの存在が喜久雄を人間らしく描いているのか。

ネタバレを読む

0
国宝 上

国宝 上

吉田修一

臨場感溢れる描写が上手い。まるで自分が法廷内で人質として扱われているような、また現場指揮官として突入タイミングを窺っているような緊張感がある。前作のスズキタゴサクの爆弾を使った事件運びと同一のような、目的不詳で気味の悪い精神性を持つ犯人のように見せかけながら、今作の犯人"柴崎"はまともな人間性や動機を持しており、そこがさらに前作のスズキの気味の悪さを対照的に際立たせるような2作目であった。前作では類家がスズキに一杯食わされていたが、柴崎に対しては類家の方が上回っている感があり、さらにその類家を今回もスズキは見越していて、やはり類家の危うさとスズキとの対決が今後も見どころになるのではないだろうか。続編が出ればまた読みたい。

0
法廷占拠 爆弾2

法廷占拠 爆弾2

呉 勝浩

実際にあったグリコ/森永事件をフィクションで描いた作品。"子供が被害者"という点からこの事件に関与していた対照的な子供たち(俊也と総一郎・望)をメインに描いている。何の糸口もないところから最後は犯人"くら魔天狗"の構成メンバーや内乱まで解像し、俊也の叔父にも動機や当時の状況を聞き出して答え合わせをしているので、ミステリーとしてはすっきりしていたと思う。

1
罪の声

罪の声

塩田 武士

過去よりも良くなっている世界を、私は何も知らなかった。10の思い込み(分断本能、ネガティヴ本能、直線本能、恐怖本能、過大視本能、パターン化本能、宿命本能、単純化本能、犯人探し本能、焦り本能)を自覚し、冷静にデータを取り入れることで、過大評価された世界の、現実的な今の真実を知る。

0
FACTFULNESS(ファクトフルネス)

FACTFULNESS(ファクトフルネス)

ハンス・ロスリング/オーラ・ロスリング

プロローグで人類が何らかの空気汚染的な要因で滅亡していることが仄めかされ、そこから終盤まで人類が滅亡してゆく様子が写実的に描かれている。生物兵器として研究された新種の菌株の0℃以上で異常増殖という特性が序盤で明かされ、南極大陸に従事していた各国の数千人だけが菌に侵されず生き残り、それ以外の大陸の人類全員が全滅。人類が様々なフェーズで混乱し、社会が麻痺していく様を明確に描写した。医学的な観点からのみではなく、政治的・哲学的など多岐にわたる知見から騒動を意見し、専門的な単語も多かったがそこに文学性を感じ、興味深い文章になっていたと思う。この作品がコロナ禍の前に書かれた作品であるのはすごい。フィクションの中にも戦争の不毛さを訴える強い意志があり、啓蒙的な側面も大きかった。

0
復活の日

復活の日

小松 左京

今までの加賀恭一郎シリーズで一番おもしろかった。チャプターごとに視点が変わり、容疑者野々口の手記と加賀の記録によって構成される。はじめに野々口の手記から始まっているので、読者の我々は初めから野々口の手中にあり、日髙の人間性に対する固定概念を植え付けられている。真相が"悪意"で動機づけられていたのも理解が易く良かった。

ネタバレを読む

0
悪意

悪意

東野 圭吾

子どもとの会話だけでなく、大人の人間関係においても学ぶべき点が多々ある。「人の話を聴く」ときに、全てを理解する前に自分の意見を思案していたり、何かと比較していたりする時点で、本当の「人の話を聴く」ことはできていない。まず相手の言おうとしていることを全て理解するための相槌ないし質問をした上で相手の述べたことを復唱し、そこから打開策を共に考えることが聴く行為である。親子関係においても、一個人として子どもと対等に接することが必要。

0
子どもとのコミュニケーション・スキル

子どもとのコミュニケーション・スキル

田上時子

伏線とその回収がすごい。練り上げられたトリック。ゲームにまつわる全ての記述に意味がある。しかし、登場人物同士の関係性には謎の記述が多く、鉱田ちゃんに対する真兎と絵空の気持ちには友情以上のものが仄めかされており、それはよく読め込めば分かるものなのか。読者に残されたミステリーということなのだろうか。

0
地雷グリコ(1)

地雷グリコ(1)

青崎 有吾

体を重ねることもなく3度しか逢瀬していないにも関わらず、お互いの人生に波をもたらした扇情的な恋愛を描いた。洋子がリチャードとの婚約を破棄して蒔野に会いに行った場面は、誰しも経験するようなありきたりなことなのかもしれない。自分で自分の人生を切り拓いた洋子のような自立した大人でも、失恋の悲しみを感じてPTSD(テロ経験によるものとはいえ)に苦しみ、立ち直るまで長い年月を要したことに、人間らしさや親近感を感じた。お互いを想い合っているのに距離は遠く、すれ違い続けている大人の悲恋。感情の描写も多くあったが、かなり写実的であり、大人としての理性が働いたうえでの思考が感情に表れていると思う。もっと貪欲で狡猾な心情を見たかったが、それでこそ大人の恋愛小説なのだろうか。 最終章では、お互いの後悔を昇華し、明るい尊敬と少しの恋慕を抱えて二人が再会するところで終わる。5年前の東京では、洋子があらゆる選択を取捨したおかげでふたりの人生が交錯しなかったと言えるが、今回のパリでは洋子の選択により2人が再会することになる。緻密な構成が美しい。2人がお互いに恋慕を抱えているのは動かぬ事実であるように思うが、現実を忘れて理性を捨て、お互いの愛を受け入れられるかどうかは2人のみが知る世界だ。

ネタバレを読む

0
マチネの終わりに

マチネの終わりに

平野啓一郎

人間くさくてあたたかいひとたちばかり。最終章だけが成瀬の一人称であり、謎に満ちた成瀬の心境を見られてよかった。

0
成瀬は天下を取りにいく

成瀬は天下を取りにいく

宮島 未奈

結局犯人がどちらか教えてくれない。こちらに推理を委ねてくるのは新しい構成で面白いと思う。最後まで、園子の兄の和泉視点で進み、第三者として加賀恭一郎を登場させる斬新さ。

0
どちらかが彼女を殺した

どちらかが彼女を殺した

東野 圭吾

変わり者の成瀬について、成瀬を見る第三者視点で各チャプターが描かれている。我が道を行く成瀬がまっすぐに生きることで、登場人物の人生を照らしていく。

0
成瀬は信じた道をいく

成瀬は信じた道をいく

宮島 未奈

台本なので情景描写に欠けており頭のなかにイメージできない。意味がわからないところが多い。大袈裟なストーリーや派手な場面展開が見受けられるが、登場人物の繊細な心理変化や感情は皆無。演劇を見ろということか。

0
ハリー・ポッターと呪いの子 舞台脚本 東京版

ハリー・ポッターと呪いの子 舞台脚本 東京版

J.K. ローリング/ジョン・ティファニー

加賀恭一郎が卒業後教師を経て警察官となって関わる殺人事件のミステリー。バレエを舞台としており、ただ単純な殺人事件の犯人探しでなく、登場人物の動機や人間らしさが興味深かった。「眠りの森」の舞台はかなり専門的で、芸術的な部分もあるように感じた。加賀恭一郎が好意を抱いたバレリーナが最終的に事件の大きな鍵を握っているところが憎らしい。全員の動機づけが綺麗で無理がなく、しっくりくる。

ネタバレを読む

0
眠りの森

眠りの森

東野 圭吾

現代の日本では、用途があるものだけを必要とし、自然や動物は価値が無く不要なものであるという概念が存在しており、意味だけを求めて行動している大人が多い。自然(木々や川など)に存在している意味など無いし、我々の行動や生きる動機についても意味がなくて良いものだ。都会と自然が完全に分離することなく干渉し合う環境で生きることで、AIとは違う人間らしさを持って生きられる。一つの事象に対してそれぞれの個人が受け取るものは千差万別であり、それぞれが違っていてそれぞれが個性であり、それぞれが事実である。テレビやSNSといった単一思考に捉われるのは人間らしさや人生を忘却してしまう行為で、自分の身体で見て触れて感じることが大切な経験であるだろう。

0
ものがわかるということ

ものがわかるということ

養老 孟司

主人公がチャプターごとに代わり、それぞれがお金についての悩みや不安を打破・解決していく物語。年代により考えることは千差万別で、しかし誰もが一度は感じたことのある悩みを普遍的に描いているので共感しやすい。特に同年代の女性たちのチャプターでは、貯金や節約、結婚や育児に関するお金のことなど、ホットな話題で多岐に網羅しており、自身のお金のことについても見直したいと思わせる啓発的な内容であった。

0
三千円の使いかた

三千円の使いかた

原田 ひ香