
レビュー (20件)
弟との死別、離婚、不妊治療…辛いことが重なり、生活が荒んでいく主人公。彼女を救ったのは、美味しいご飯を作る不機嫌な弟の彼女。家事代行の仕事を手伝う中で、次第に生きる力を取り戻していく。
5 野宮薫子 41歳 東京法務局八王子支局勤務 供託官 公務員 不妊治療 元夫 滝田公隆 弁護士 児童相談所でも勤務 自分の家族をいいものだと思えたことが一度もなく 家庭や子供を持ちたくなかった 彼女となら変われるかもと思ったがやはり無理だった 傷ついた子供たちをすくい上げることを自分の使命としたような生き方を弁護士として選んだ 弟 野宮 晴彦 12歳年下 急死 屈託ない笑顔で周りを幸せにするような人 しかし やはり多くの悩みを抱え 味覚障害であることも隠していた 人道支援医療団体で働く事を決め薬剤の知識を生かし役立ちたいと考え会社を辞める決意を固めていた 命の危機に直面するようなこともあるから遺言書を法務局に預けていた 父と母のがんじがらめの愛情からも逃れたかった 弟の恋人 小野寺せつな 頼まれて恋人のふりをしていた 気の合う友人 弟と同じ年同じ誕生日 幼い頃 母が出ていき父と暮らす 家政婦として派遣された斗季子と知り合う 移動教室で留守の日 父が自死 独身で飲食店経営の母方の伯母に引き取られる 専門学校卒業しホテルのレストランに就職 一年前伯母がコロナで亡くなる 本人は 三年前 慢性骨髄性白血病とわかり治療を続け ホテルの勤務が厳しくなり家事代行につく 常磐 斗季子 43歳 男と駆け落ちし双子の娘を産むが 男に逃げられシングルで子育て 家政婦として働き カフネ 家事代行の会社を始める 社長 港航一 晴彦の同僚 営業職 同い年 晴彦の欠勤を心配しマンションを訪れ晴彦の死体を発見 晴彦と愛し合っていたが 公にできるような環境になかったので とりあえず結婚した 晴彦の死は自分のせいではと自暴自棄
6/14読み終わり。この方の本は初めて。面白かった。難しい。突然弟を亡くし不妊治療の末授からず、夫と離婚してズタボロの状態だった薫子。救ってくれたのは弟の遺産相続人に指定されていた小野原せつな。家事代行な傍ら、困っている人にボランティアで掃除&料理を作る活動をしていて、それに薫子も加わる。せつなを通して、自分が知らなかった弟のことや、せつなの過去や病気を通して、自分も成長みたいな。
本年度の本屋大賞に輝いた小説。 カフネとはポルトガル語で「愛する者の髪にそっと指を通すしぐさ」という意味。 食べることは生きること。人生の失望を味わった人たちが、食を通じて生きる力を取り戻していく物語。 人は誰でもそれぞれが人に言えない傷を抱えながら懸命に生きているんだなと、愛おしい気持ちになる。でも、優しく頭をなでて 髪に指を絡ませてくれる人がいてくれれば、人は生きていけるのだ。
親、兄弟、姉妹、夫婦、恋人 どんなに親しくて理解していたつもりでも 本当の奥底の思いを知る事は難しい 人の心は複雑なのだ だからこそ目を背けず争いを恐れず 言葉を尽くして分かりあう努力をしなければならない 『カフネ』とはポルトガル語で 子供、恋人、家族など、愛する人の髪にそっと指をとおすしぐさ 頭をなでて眠りにつかせる、穏やかな仕草を表す 日本語に訳すのが難しい言葉との事 文末をそのまま引用するなら —-髪に指をとおし、言葉にならないものを伝えるように、やさしく、胸を満たす思いをこめて、そっと梳く—— そんな仕草 思いテーマが盛り込まれていましたが 前半はテンポ良く読ませてくれ 後半は溢れる涙が止まらない 薫子とせつなの不思議な関係 彼女達を取り巻く人達 優しく切ない 心に染み渡る物語でした 読む手が止まらずあっという間に読了
人間関係って煩わしいし面倒だと感じることも少なくないけど、人間っていいな、と思った。家族でなくても、愛情は持つ。大切にしたいという思いは伝わる。支え合えるって改めて大事なことで、辛いときにそう言える覚悟もその人への愛情なのかも。愛の形は人それぞれ。くくりつける必要はない。愛で人を苦しめることもある、でも、それは死にたいほどの苦しさではない、相手が家族なら。無条件だから受け入れてしまう。相手の自分への態度一つでその人を判断してしまいがち。その人を知りたい、て思えることって素敵なこと。離れることは簡単だから。すぐに分かり合うことはできない、他人の気持ちを100%わかるなんてありえないから。いつも、おせっかいにアドバイスをしてしまうけど、それよりとにかく聴くこと、寄り添うことのほうが大事。それを教えてくれた。この本に出会えてよかった。
ネタバレを読む
本屋大賞受賞納得の渾身作。 時に激しくぶつかりながらも、心が少しずつ歩み寄っていく様には何度も心波打ち揺さぶられた。薫子のただならぬパワーに引きずりこまれ、思いも寄らぬラストの着地には身悶え。 1人でも多く苦しむ人達が救われてほしいと思わずにはいられない。
『セフネ』 たまたま生まれたひとつの縁が、生き方そのものを変えていく—— そんな出会いが、人生には時として訪れます。 ずっと探し求めていた何かと出会う瞬間、それは案外、好ましくない印象や違和感とともにやってくることもあります。だからこそ、その出会いの意味を見いだすには、時間と努力が必要で、その過程には、迷いや不安、時には悲しみや絶望すら伴います。 避けて通れない「嫌なこと」に直面し、乗り越えようとするなかで、これまでの価値観ややり方が通用しないことを痛感する。けれどその苦しみのなかで、自分の内側に何かが生まれ、感覚が変わり、視野が広がっていくのです。今まで受け入れられなかった価値や他者の在り方を、少しずつ受け入れられるようになったとき、人は静かに変化していきます。 その変化に気づき、心がふとやわらかくなる瞬間—— もしかしたら、それは「歓び」へとつながる第一歩なのかもしれません。 そしてその出会いこそが、人生を豊かにしてくれる“幸せの種”だったのだと、後から気づくものなのですね。
2025年本屋大賞発表日に読了! 阿部暁子さん、おめでとうございます。 法務局に勤務する野宮薫子と彼女の弟の元恋人で料理人の小野寺せつなが、ボランティア活動「カフネ」を通じて関わり合っていく物語 著者の色々な気持ちが込められてる1冊(u_u*)
溺愛していた弟の急死に加え、プライベートでも色々あって疲れ切っている”薫子"と、急死した弟の元恋人で家事代行サービス会社『カフネ』で働く"せつな"の二人が、食と会話を通じて前を向いていく温かい物語です。 二人の絶妙な会話にくすりとしながらも、生きることの大変さと大切さを感じさせてくれる一冊です。 食事の描写も美味しそうで、悪魔に魂を売りたくなりました(笑)
物語の展開も、日常の風景も心地よい 登場人物個々の想いに共感できるわけじゃないけど いろんな考えを持った人がいる いろんな想いを抱えて生きている人がいる そういうことを考えさせられる1冊でした