
チコ
レビュー
まるで映像で観ているかのように細部に渡り文字でシーンを描くのはいつもの通りだが、だんだんその度合いが増しているような気がしなくもない。少しくどいところもあるかな。でも、やはりこの作家の草を中心にしてとりまく人々とのコミュニケーションはとても温かい。同棲を始めた久美さんは一ノ瀬君とうまくいくのかな。 愛情に裏打ちされた賢さがあっていい。今回は拾った吹き出しメモにたすけてと書かれてあったことに端を発しSTORYが展開していく。このシリーズはまだまだ続くだろう。続いてほしい。

月夜の羊 紅雲町珈琲屋こよみ
吉永 南央
以前から読みたかった初夏の訪問者。幼年期に亡くなった良一を名乗る男性が登場し草を翻弄する。まるでお芝居を観ているかように場面が自然に思い浮かぶのが吉永さんの小説。とても描写が細かい。読んでいてもしかしたら本物の良一?!と訝しく思ったり。結局、登場した人物すべて善良な人間でした!

初夏の訪問者 紅雲町珈琲屋こよみ
吉永 南央
翌朝、引越し業者が来るまでの一夜を徹してアパートの一室で繰り広げられる男女の心理戦。一卵性双生児だと信じ込んでいたヒロとアキ。前年の山登りのガイドの転落事故がきっかけで歯車が大きく外れていく。このガイドは彼らのまだ見ない父親という設定だが、かなり不自然で無理がある。心理戦は非常に理屈っぽくて私の好みではない。でも、どちらかというと面白かった。

木洩れ日に泳ぐ魚
恩田陸
2022年芥川賞授賞らしいので読んでみた。小さな職場の人間関係が軸。男性二谷さん、仕事のできる女性押谷さんが中心。大きく絡むのが二谷さんと付き合う芦川さん。あーー気持ち悪い!!二谷&押谷、性格悪すぎ。こういう心理を書ききることができる著者も歪んだ感性の持ち主かと疑いたくなる。読んでいる間も読後感も爽やかとは無縁。小説を書く技量に優れているらしいけど。

おいしいごはんが食べられますように
高瀬 隼子
短編集のようで実は複雑に繋がっている。あちらこちらに伏線がちりばめられており、登場人物がみんな魅力的。心温まるいい本だ。特に心に残った言葉。好きな場所にいるだけで元気になることがある。

木曜日にはココアを
青山美智子
宮部みゆきのは推理小説ではなくて鋭くて深い人間観察に基づく小説なので、とても読み応えがある。1作目 誰か。somebodyは展開が遅すぎて私にはもう1つだったけれど、2作目の杉村シリーズはとても面白かった。約600ページの長編だけど読み疲れなし。いつか再読しよう‼️

名もなき毒
宮部 みゆき