かずひで
レビュー
短編が繋がっていてとても面白かった。幸せというのは起こっているけど、それを幸せと感じるかは捉え方次第だと思う。そして捉え方を変えて得た小さな幸せはとても大きくなるように。自分の知らないところで幸せは繋がっているかと思うと少し面白くなりそうかも。

木曜日にはココアを
青山美智子
おおよその物事の事象には必ず直前に原因が存在し、私たちはその原因に焦点を当てる。しかし直後に焦点を当てる行動分析学というのは大変興味深い学問である。生物の行動の不確定さを表す一つの例として、ギャンブルの世界で競馬は競艇よりも難しいと言われている。その理由として競艇は生物×機械であるのに対し競馬は生物×生物であるからだ。私は本著で述べられている通り、行動分析学を用いて人の行動を変えるということに大いに賛成であり、寧ろ積極的に取り入れていきたいと思う。しかし人の行動というものは単純なものばかりではない。また同じ人間であっても国や人種、宗教観などの環境によって大きく変わってくるはずだ。そのため単純な状況下ではない時に、私はどのような行動をとるべきなのか。そう考えた際、私は経験が大切なのではないかと思う。奇しくもそれは「オペラント行動」であり、行動分析学である。そのため私はより多くの経験をこの先していきたいと思う。

メリットの法則
奥田健次
この本はスティルライフとヤー・チャイカの2本が書かれている本である。不思議な主人公から見る世界観や描写が綺麗で心の隅を埋めてくれるような内容であった。とにかく美しく触れた途端に崩れそうであった。いい小説である。

スティル・ライフ
池澤夏樹
最後の行で散らばってた違和感がミステリーとなった。ただの恋愛小説ではなく面白かった。非常に上手く騙された小説であった。そして見た目もSideAとSideBとなっており、タイトルも曲の名前とアルバムのようであった。そこもまた面白く、まさにイニシエーションであった。

イニシエーション・ラブ
乾 くるみ
人に対して殴ったりナイフで刺したりとすると暴行罪や傷害罪として扱われ、処理される。しかし必ずしも「悪」に名前がついているというわけではない。名前がついてない悪、そしてその悪を作る毒。これは特定の原因があるわけではないがそのためにたちが悪い。それでは名もない毒というのに私たちはどう立ち向かえばいいのだろうか。そしてどう処理すればいいのだろうか。生きるということは様々な事がありそれが複雑に絡まる。そのどれかに不具合が生じると人は生きづらくなる。難しいテーマを扱ってあり、とても考えた。

名もなき毒
宮部 みゆき
この小説は単なる戦争小説ではないと感じた。物語には上手いと感じる技術があった。それは物語を感受性豊かであり、精神的にも発達段階である子どもを主人公としたことや、お母さんの心理描写が少なく謎が多いことや、戦後の女性が多く出てきたことである。敗戦国の生活事情は多く取り上げられてきたが、性に関する事に真っ向から取り組んだものはあまりなかったのではないか。また主人公がさほど不幸ではないという点も他の戦争小説とは異なる感想を持たせたのではないだろうか。不幸ではないからこそのつらさや世の中の不条理さを如実に表していると受け取ることもできるそんな小説であった。

水曜日の凱歌
乃南 アサ
人が生きるというのはどういうことなのだろうか。心臓が止まった時、人は死ぬのだろうか。そのどちらにも「意識」の存在が重要である。結合双生児として2人の人間が1つの体を共有する。意識は2つだが命は1つ。1つの命に一つの意識ではないため、より意識とは何なのか突きつけられた。現実で心臓が正常に動いていたら意識だけが死ぬというのは珍しいかもしれない。しかし意識が生きてるとか死ぬとかの境界線というのは一体どこからなのか。答えというのは簡単には出せないが、考えていかなければならない議題であり、命題である。

サンショウウオの四十九日
朝比奈 秋