水曜日の凱歌

水曜日の凱歌

乃南 アサ
新潮社 (2018年7月28日発売)
ISBN:9784101425580
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作品紹介・あらすじ

昭和20年 8 月15日水曜日。戦争が終わったその日は、女たちの戦いが幕を開けた日。世界のすべてが反転してしまった日──。14歳の鈴子は、進駐軍相手の特殊慰安施設で通訳として働くことになった母とともに各地を転々とする。苦しみながら春を売る女たち。したたかに女の生を生き直す母。変わり果てた姿で再会するお友だち。多感な少女が見つめる、もうひとつの戦後を描いた感動の長編小説。

感想・レビュー (1件)

この小説は単なる戦争小説ではないと感じた。物語には上手いと感じる技術があった。それは物語を感受性豊かであり、精神的にも発達段階である子どもを主人公としたことや、お母さんの心理描写が少なく謎が多いことや、戦後の女性が多く出てきたことである。敗戦国の生活事情は多く取り上げられてきたが、性に関する事に真っ向から取り組んだものはあまりなかったのではないか。また主人公がさほど不幸ではないという点も他の戦争小説とは異なる感想を持たせたのではないだろうか。不幸ではないからこそのつらさや世の中の不条理さを如実に表していると受け取ることもできるそんな小説であった。