すだれ
レビュー
大阪聖地巡礼本になること間違いなしな一冊。 この本に登場する全員が、何かに躓いたり、鬱屈したり、くよくよ悩んだりしているのだが、それらをひっくるめてなんだか人間が愛おしくなる。 ミナミと言えば、梅田を中心にしたキタに比べると、猥雑でごちゃごちゃしていて忙しない、一種独特の雰囲気のエリア。 個人的にも馴染みのあるミナミだが、この特異な空気感は、明日を夢見る多くの芸人を抱えている土地ならではのものだったのだと、今更ながら気付かされた。 短編を積み重ねた先にある、最後の「ミナミの春、万国の春」。痺れました。 カサブランカの二人、かっこいい!
ミナミの春
遠田潤子
本棚登録:0人
熟練の腕が光る、さすがの短編集。 読者が「えっ」と思うような仕掛けが随所にあって、短編小説の醍醐味が味わえる。 唯川恵の描く女性の生身感が好きだと改めて思った。
みちづれの猫
唯川恵
本棚登録:0人
読みごたえのある骨太ファンタジー。 最後まで緊張感のある展開だった。 決着の付け方が、なんともこの作者らしい。 後日談はもう少し引っ張ってくれて良いのよ。
ハヤディール戀記(れんき)(下)(仮)
町田そのこ
本棚登録:2人
ミステリ要素の強い王道ファンタジー。 核となる事件が起こった日を軸にして、過去と現在、未来が交錯するように描かれる。 それでも読みやすく、じわじわと謎が解けていくカタルシスがたまらない。 町田そのこ、さすがのクオリティ。
ハヤディール戀記(れんき)(上)(仮)
町田そのこ
本棚登録:2人
さくさく読める短編集。 ものすごく面白いかというと微妙だが、これはあかん、というものも一つもない。 このあたりが宮部みゆきの強さだろう。
新しい花が咲く
宮部みゆき
本棚登録:1人
傑作ミステリ。 頁数は多いが、話の展開はスピーディでテンポも良い。
百年の時効
伏尾美紀
本棚登録:7人
確かに意外性のあるオチではあったけど、その前提となる設定にちょっと無理やり感がある。
探偵小石は恋しない
森バジル
本棚登録:20人
尼崎のアパートで孤独死した、名前も定かでない一人の女性の人生を掘り起こしたノンフィクション。 こんなにも自分の痕跡を消して生きていけるものなのかと驚いた。 おそらく、彼女の人生には何か深い闇があるのだろうが、今となっては知る術もない。真摯な内容だが、取材期間の短さはいかんともしがたく、新聞記者発のノンフィクションの限界も感じる。
ある行旅死亡人の物語
武田 惇志/伊藤 亜衣
本棚登録:0人
じゅえるーーー! これまで新キャラが投入されることはあれど、レギュラー陣が消えることがなかったために、思いっきり取り乱してしまった。 いや、しかし私には見える。門司港に戻ってくる彼女の姿が。 今回はいつもよりシリアス度が高いので、読者の反応は分かれるかもしれない。個人的には、店長の過去はミステリアスなままでも良かった。 それにしてもツギの特殊能力がすごい。
ネタバレを読む
コンビニ兄弟5
町田そのこ
本棚登録:6人
嶋津さんの書く女性は、どこか狡かったり、だらしがなかったりするのだが、その欠点があるからこそ生きている感じがする。 カフェーの女給が主人公の小説かと思いきや、各登場人物の女給時代は結構短い。女給をしていた女性がどういう人生を送ったがこの小説のミソである。時代としては昭和元年前後から昭和25年まで、実に四半世紀に亘る。 東京の下町史として読んでも面白い。
カフェーの帰り道
嶋津輝
本棚登録:0人
きれいごとではない、人生のしんどさを描かせたら町田そのこは本当に上手い。 中学生時代、ある秘密を共有することになった幸恵と隆之を起点に、次々に主人公を交代させながら、三十余年に亘って物語は展開する。 明るい物語ではなかったけれど、不思議と暗い小説という印象はない。 最後のシーンは特に良い。
蛍たちの祈り
町田そのこ
本棚登録:86人
月収を切り口に、さまざまな女性の人生を切り取った連作短編集。 登場人物の人生が少しずつ重なっていて、最後はほっこり温かくなるような小説だった。
月収
原田ひ香
本棚登録:134人
終戦直後、デモクラシー教育の実験に参加することになった四人の女性の物語、と言うと、なにやら難しそうな気配がするが、超弩級のエンタメ小説である。 テーマが小難しそうなのと頁数が多いのとで、敬遠されてしまうかもしれないが、食わず嫌いは余りにももったいない。 クスッと笑えて、ハラハラして、切なくも暖かな余韻が残る。間違いなく、森絵都の新たな代表作になるだろう。 ヤエが特に良い味を出している。 作中、大正デモクラシーに誰も言及しなかったのだけが、唯一惜しまれる。 大正デモクラシーの残り香が一掃されたのは国体明徴声明(1935年)あたりなので、実は、昭和になっても、大正デモクラシーで醸成されたリベラルさは、知識層の間では相当に残っていたはずなのである。 兄がいる美央子か、もしくは勉強熱心なリュウか、いずれかの口から大正デモクラシーについて一言あっても良かった。 ケーディス大佐がちょこっと登場する別の本を直前に読んだばかりだったので、こちらでも出てきて、なんだか旧友に会ったような気持ちになった。
デモクラシーのいろは
森絵都
本棚登録:9人
全盛期の恩田陸を知る読者には、少々寂しい短編集。 恩田陸と言えば、読者を一瞬で小説の世界に引き込むような引力のある文章が魅力だったのだが、それが失われつつある。 ホラー小説では致命傷である。
酒亭DARKNESS
恩田陸
本棚登録:17人
北朝鮮の帰還事業については以前から興味があったため、巻末の参考資料は概ね読んだことがあった。 なので、作中の帰還事業に関連したエピソードについては、既視感がある(NHKの北朝鮮特集からのネタも結構多かった)。 この作品が令和の現在に問いかけるものは何か。 それはやはり、二次情報を盲信してしまうことの危うさであろう。 ソースが不明な情報が飛び交う現代において、しきりに警鐘が鳴らされていることではあるが、では、その二次情報を鵜呑みにした人々の最も悲惨な例は何かと言えば、この帰還事業以上のものを寡聞にして知らない。 そういう意味では、この小説のテーマは、帰還事業という歴史的に特異な事件をモチーフにしつつも、極めて現代的である。 違和感を言えば、大阪の公立高校に進学していた主人公の仁学が、大阪市立大学(現・大阪公立大学)を受験・合格するのはそんなに難しかったのか、ということ。仁学は心ない教師の言葉により大学進学を断念するが、大阪市立大学の入試は調査書(高校から提出)さえなんとかなれば完全なる学力勝負で挑めるはずで、しかも学費は大阪市内在住ならば格安、それでなくとも国公立大学の学費が馬鹿みたいに安い時代である。仁学に同情的だった教師の山崎がこの道を積極的に勧めなかったのは何故かと思う。 蛇足ながら、表紙にハングルで「地上の楽園(チサンナグォン)」とあるのだが、多分、この当時の北朝鮮式のハングル表記ならば「ナグォン」ではなく「ラグォン」になると思う(漢語の語頭のRがNになるのは韓国語の特徴である)。
地上の楽園
月村了衛
本棚登録:0人
噂に違わぬミステリの傑作。 最後の着地点は、終盤になってもわからなかった。悔しい! 今年読んだミステリの中では間違いなくトップクラス。 主人公の日野、部下の入江、同期の羽幌はもちろんだが、何気にバー「ブールバード」のマスターのキャラクターが良い。
失われた貌
櫻田智也
本棚登録:57人
歴代皇帝史として、よくまとまった内容。 中国の正史をある程度頭に入れてから読むのがお薦め。 洪武帝がエキセントリックなのは有名だが、永楽帝の後宮での振る舞いもなかなかである。 中国の歴代皇帝は、何をするにしてもスケールが違う。
後宮 宋から清末まで
加藤徹
本棚登録:2人
警察ミステリ界にニューヒロイン登場。 ヒロインの立ち位置がこのミステリの肝である。 この年齢の女性警官を主役に据えた小説は、これまでなかったのではないか。 続編はあるのか?
交番相談員 百目鬼巴
長岡弘樹
本棚登録:21人
加賀藩前田利常の娘、富姫の生涯を、侍女・小蝶の視点で描いた歴史小説。
おふうさま
諸田 玲子
本棚登録:0人
プロ野球の裏方、スカウトを主人公にした変わり種の野球小説。 創作だと承知しつつも、スカウト絡みのエピソードに漂うリアリティにはひりひりする。長年野球を取材してきた作者ならではの強みか。 文章も読みやすく、登場人物の配置も申し分ない。何より、登場人物が前を向いて一歩踏み出そうとするところにグッときた。次作にも期待
眩光の彼方
岡田真理
本棚登録:0人