すだれ
レビュー
尼崎のアパートで孤独死した、名前も定かでない一人の女性の人生を掘り起こしたノンフィクション。 こんなにも自分の痕跡を消して生きていけるものなのかと驚いた。 おそらく、彼女の人生には何か深い闇があるのだろうが、今となっては知る術もない。真摯な内容だが、取材期間の短さはいかんともしがたく、新聞記者発のノンフィクションの限界も感じる。
ある行旅死亡人の物語
武田 惇志/伊藤 亜衣
本棚登録:0人
じゅえるーーー! これまで新キャラが投入されることはあれど、レギュラー陣が消えることがなかったために、思いっきり取り乱してしまった。 いや、しかし私には見える。門司港に戻ってくる彼女の姿が。 今回はいつもよりシリアス度が高いので、読者の反応は分かれるかもしれない。個人的には、店長の過去はミステリアスなままでも良かった。 それにしてもツギの特殊能力がすごい。
ネタバレを読む
コンビニ兄弟5
町田そのこ
本棚登録:6人
嶋津さんの書く女性は、どこか狡かったり、だらしがなかったりするのだが、その欠点があるからこそ生きている感じがする。 カフェーの女給が主人公の小説かと思いきや、各登場人物の女給時代は結構短い。女給をしていた女性がどういう人生を送ったがこの小説のミソである。時代としては昭和元年前後から昭和25年まで、実に四半世紀に亘る。 東京の下町史として読んでも面白い。
カフェーの帰り道
嶋津輝
本棚登録:0人
きれいごとではない、人生のしんどさを描かせたら町田そのこは本当に上手い。 中学生時代、ある秘密を共有することになった幸恵と隆之を起点に、次々に主人公を交代させながら、三十余年に亘って物語は展開する。 明るい物語ではなかったけれど、不思議と暗い小説という印象はない。 最後のシーンは特に良い。
蛍たちの祈り
町田そのこ
本棚登録:86人
月収を切り口に、さまざまな女性の人生を切り取った連作短編集。 登場人物の人生が少しずつ重なっていて、最後はほっこり温かくなるような小説だった。
月収
原田ひ香
本棚登録:134人
終戦直後、デモクラシー教育の実験に参加することになった四人の女性の物語、と言うと、なにやら難しそうな気配がするが、超弩級のエンタメ小説である。 テーマが小難しそうなのと頁数が多いのとで、敬遠されてしまうかもしれないが、食わず嫌いは余りにももったいない。 クスッと笑えて、ハラハラして、切なくも暖かな余韻が残る。間違いなく、森絵都の新たな代表作になるだろう。 ヤエが特に良い味を出している。 作中、大正デモクラシーに誰も言及しなかったのだけが、唯一惜しまれる。 大正デモクラシーの残り香が一掃されたのは国体明徴声明(1935年)あたりなので、実は、昭和になっても、大正デモクラシーで醸成されたリベラルさは、知識層の間では相当に残っていたはずなのである。 兄がいる美央子か、もしくは勉強熱心なリュウか、いずれかの口から大正デモクラシーについて一言あっても良かった。 ケーディス大佐がちょこっと登場する別の本を直前に読んだばかりだったので、こちらでも出てきて、なんだか旧友に会ったような気持ちになった。
デモクラシーのいろは
森絵都
本棚登録:9人
全盛期の恩田陸を知る読者には、少々寂しい短編集。 恩田陸と言えば、読者を一瞬で小説の世界に引き込むような引力のある文章が魅力だったのだが、それが失われつつある。 ホラー小説では致命傷である。
酒亭DARKNESS
恩田陸
本棚登録:17人
北朝鮮の帰還事業については以前から興味があったため、巻末の参考資料は概ね読んだことがあった。 なので、作中の帰還事業に関連したエピソードについては、既視感がある(NHKの北朝鮮特集からのネタも結構多かった)。 この作品が令和の現在に問いかけるものは何か。 それはやはり、二次情報を盲信してしまうことの危うさであろう。 ソースが不明な情報が飛び交う現代において、しきりに警鐘が鳴らされていることではあるが、では、その二次情報を鵜呑みにした人々の最も悲惨な例は何かと言えば、この帰還事業以上のものを寡聞にして知らない。 そういう意味では、この小説のテーマは、帰還事業という歴史的に特異な事件をモチーフにしつつも、極めて現代的である。 違和感を言えば、大阪の公立高校に進学していた主人公の仁学が、大阪市立大学(現・大阪公立大学)を受験・合格するのはそんなに難しかったのか、ということ。仁学は心ない教師の言葉により大学進学を断念するが、大阪市立大学の入試は調査書(高校から提出)さえなんとかなれば完全なる学力勝負で挑めるはずで、しかも学費は大阪市内在住ならば格安、それでなくとも国公立大学の学費が馬鹿みたいに安い時代である。仁学に同情的だった教師の山崎がこの道を積極的に勧めなかったのは何故かと思う。 蛇足ながら、表紙にハングルで「地上の楽園(チサンナグォン)」とあるのだが、多分、この当時の北朝鮮式のハングル表記ならば「ナグォン」ではなく「ラグォン」になると思う(漢語の語頭のRがNになるのは韓国語の特徴である)。
地上の楽園
月村了衛
本棚登録:0人
噂に違わぬミステリの傑作。 最後の着地点は、終盤になってもわからなかった。悔しい! 今年読んだミステリの中では間違いなくトップクラス。 主人公の日野、部下の入江、同期の羽幌はもちろんだが、何気にバー「ブールバード」のマスターのキャラクターが良い。
失われた貌
櫻田智也
本棚登録:57人
歴代皇帝史として、よくまとまった内容。 中国の正史をある程度頭に入れてから読むのがお薦め。 洪武帝がエキセントリックなのは有名だが、永楽帝の後宮での振る舞いもなかなかである。 中国の歴代皇帝は、何をするにしてもスケールが違う。
後宮 宋から清末まで
加藤徹
本棚登録:2人
警察ミステリ界にニューヒロイン登場。 ヒロインの立ち位置がこのミステリの肝である。 この年齢の女性警官を主役に据えた小説は、これまでなかったのではないか。 続編はあるのか?
交番相談員 百目鬼巴
長岡弘樹
本棚登録:21人
加賀藩前田利常の娘、富姫の生涯を、侍女・小蝶の視点で描いた歴史小説。
おふうさま
諸田 玲子
本棚登録:0人
プロ野球の裏方、スカウトを主人公にした変わり種の野球小説。 創作だと承知しつつも、スカウト絡みのエピソードに漂うリアリティにはひりひりする。長年野球を取材してきた作者ならではの強みか。 文章も読みやすく、登場人物の配置も申し分ない。何より、登場人物が前を向いて一歩踏み出そうとするところにグッときた。次作にも期待
眩光の彼方
岡田真理
本棚登録:0人
自分の気持ちも相手の気持ちも安易に言葉に落とし込まない主人公が良い。
リボンちゃん
寺地はるな
本棚登録:28人
中日監督・落合博満を描いた傑作ノンフィクション。 落合がこんなにチームを勝たせた監督だとは、失礼ながら知らなかった。 とりわけ面白かったのが森野の章。 Wikipediaには載らないようなエピソード満載で、これこそノンフィクションの醍醐味である。 情や熱を求めがちな日本プロ野球界では、落合のような監督は何かと誤解されるだろうし、受けも悪いだろうなと思う。 落合夫人の明るいお人柄、家族には恵まれていたであろうことにほっとする。
嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか
鈴木 忠平
本棚登録:0人
長い序章のような1巻。滑り出しはまずまず。 紫苑とネズミの再会からどのように物語が動き出すのか、楽しみに続刊を待ちたい。
NO.6[ナンバーシックス]再会#1
あさのあつこ/toi8
本棚登録:19人
考察が微妙。 こういう本は、現地に行ってひたすら調査するか、歴史的学識から考察するかのどちらかがないと薄い内容になってしまう。 著者グループに、厳密な意味でのイギリス史の専門家はいないのではないか。 さりとて、現地の料理研究家に取材したあともなく、丹念な実地調査をした形跡もない。 そういう意味で、踏み込みが足りない内容だった。
舌の上の階級闘争 「イギリス」を料理する
コモナーズ.キッチン
本棚登録:3人
「おやつはいつだって」が秀逸。 こういう短編は男性作家は書けないだろうと思う。
温泉小説
朝比奈あすか
本棚登録:0人
金沢の花街を舞台にした小説。 主人公の二人の芸妓の友情、その二人を取り巻く人々の温かい人柄が良い。 金沢の方言も味わい深く、金沢出身の著者からではの描写も光る。唯川恵の新たな代表作になる予感がする。 戦前の金沢もの、シリーズ化を熱烈希望。
おとこ川をんな川
唯川 恵
本棚登録:0人
公事宿狸穴屋シリーズ第2弾。 狸穴屋の皆に再会できたのが嬉しい。 表題作とその続きである「証しの騙し絵」がやはり良かったが、一人の女性の生きざまが印象深い「夏椿」もなかなか。
初瀬屋の客 狸穴屋お始末日記
西條 奈加
本棚登録:0人