
kazu
レビュー
読み応えがある点としては、ストーリーの視点がコロコロと変わっていく部分。最初は刑事の五代の視点で初期段階の事件解明がなされていく。『自白』というポイントを過ぎると、今度は加害者(犯人)の息子や被害者(弁護士)の娘へと移って行き、それぞれの立場から見える景色が描かれていく。 加害者の息子の目を通して、加害者家族としての社会的な制裁も1つの要素としてしっかりと描かれており、被害者の娘の目を通しては『真実』ではなく『事件の決着』を目指す警察や検察に対するもどかしさが描かれていく。 そして、次第に2人は自らの疑念を明らかにするために、お互いに歩み寄っていく。その2人に助け舟を出すように要所では刑事の五代も絡んでいき、さらに名古屋殺人事件の被害者家族も含めて客観的な視座を与えていく。 このように公平にそれぞれの視点における苦悩を描くことが、最後の犯人の『真実の自白』によって明らかにされる事実に対して+αの衝撃や感慨深さを与えていく作品。

白鳥とコウモリ(下)
東野 圭吾
時効まで24時間というタイムリミットの中、有力なタレコミがあり15年前の殺人事件から、昭和の未解決『三億円事件』まで絡ませてくる展開が凄い。読了中、相馬の妹のその後が気がかりだったが…伏線を各所に散りばめて最後に全て回収する横山さんの手腕に感動。 新聞記者を辞め処女作とは思えない小説だった。
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ルパンの消息
横山秀夫(小説家)
ひとり暮しの盲目の女性ミチルの家に、殺人容疑の男性がアキヒロが隠れ潜む物語。 『見えないけど何かいる…見られてはいないけどバレるかもしれない』という両者の心理戦から始まる。 たんたんと物語が進んでいく中で、大きな転換点があり、後半は伏線が回収されていき一気に読了。 心理描写がとても巧みな作品。

暗いところで待ち合わせ
乙一
「結婚をやめろ」という脅迫状を調べる探偵・北見理花と依頼人で後輩の木瀬芳樹がたどり着く思いもよらぬ真相とは? 淡々と進む物語…手紙のトリック、読み終わってみたら始まりからすべてが逆だった…😱と気付いた時は❗なるほどぉ~😌と思ったが…もう少し😥展開が早かったら…😣👍

花束は毒
織守 きょうや
『何のために働くのか』これから社会に出る人には道標の1つとして…既に働いている自分自身、仕事に対しての気持ちや考え方を問われているように感じた。 新しい視点を与えてくれる本だった。 そしてエピローグの7年後…もしかしたらと思っていた人物が手紙屋さんだとわかった時は小説として感動した最後だった。

「手紙屋」〜僕の就職活動を変えた十通の手紙〜 (喜多川 泰シリーズ)
喜多川 泰
伊良部シリーズ4部作📖読み終わってしまった。。。(笑) 表題作の『コメンテーター』はコロナ禍の中、伊良部先生とマユミちゃんがワイドショーにコメンテーターとして出演。コロナの蔓延により隣人を常に監視するかのような息がしづらい世の中になっていた中、人を思い切り脱力させて自然に癒し、自由に生きる伊良部のキャラクターにハマった。 伊良部先生は名医ではないかもしれないが、精神科が一番合っているのかもね!

コメンテーター
奥田 英朗
新刊『コメンテーター』を買ったところ…シリーズ作品と知り、第1作目の『イン·ザ·プール』から読み始めた。 主人公の伊良部先生は優しく丁寧に患者の話を聞く…ことはなく誰が相手でもマイペース。 いろんな悩みを抱えた患者さんが病院地下の神経科に回され、精神科医の伊良部先生のもとへ。 適当に見える対応で印象はずっと最悪なのに最後は悩み?🙄も解消してるという変化が面白い。

イン・ザ・プール
奥田 英朗
45歳で仕事も家族も失った英雄は、株式会社タイムカプセル社という一風変わった会社で働くことになる。未来の自分に向けて書いた手紙を、数年~数十年後に配達することを事業とする会社だ。 配属されたのは『特別配達困難者対策室』。 仕事内容は、さまざまな事情で配達不能になった人たちに直接手紙を届けにいくというものだった。英雄は上司の海人とタッグを組み、2週間のうちに5通の手紙を届けるという任務につく。 各地で手紙の受取人と出会い、それぞれの人生に触れていく中で、英雄は自分の本当の気持ちに気づいていく。 喜多川泰さんの作品は今回初めて読むが、自己啓発本であり小説だそう…いわゆる『ザ・自己啓発本』という感じは全面には出ていない作品だが、読むタイミングではあとがきも含めて色々心に響く。 小説として『手紙屋』も読んでみたい。 浮かんだ役者さんは…。 海人―永瀬廉 英雄―大泉洋 麗子―今田美桜 社長―中井貴一

株式会社タイムカプセル社 新版 十年前からやってきた使者 (喜多川 泰シリーズ)
喜多川 泰
神様当番! 毎朝、バス停で顔を合わせる5人が順番に神様当番になる。神様が満足するまで腕に神様が宿るのは怖キモイけど、神様がお茶目で可愛かった。 人生を前向きに変えていく連作。 最後の5話の作品で、『世の中は誰かの落し物で出来ていて最初から自分のものはなく生きながら自分だけのものにしていく』という神様の言葉が心に刺さった。

ただいま神様当番
青山 美智子
久しぶり読んだ本多孝好さんの作品。『1年後に楽に死ねる薬をお届けします。』と言う言葉にカレンダーに×印をつけながら1年生きながらいる女性。聴覚を失いつつある天才バイオリニスト。狂った犯人に妻子を奪われた男。そしてその毒を届ける女性本人。3つの服毒自殺の関係性に気付き真相を追う週刊誌記者、1年後の『穏やかな死』を糧に生きる女性の高野章子と槙野悦子の2視点で描かれたミステリー。 この話は牧村と記者のふたりの話で高野と記者ではない。 🈁がトリック! 高野が死を選ぶまでの話でなく、牧村が生を選ぶまでの物語。 そして高野の死に思いをはせる物語。 気持ち良く綺麗に騙された。 やはり本多孝好さんの作品は面白い。そしてドラマになるなら、槙野悦子は『江口のりこ』がハマリ役! 追記 緩和ケアの院長の言葉が心に残った。 『人はみな孤独です。誰だって一人分の孤独を抱えてる。そんなものに重いも軽いもない。等しく一人分の孤独を、みんな抱えてるんですよ。一人分の孤独になら耐えられる。そういう耐性を人間は備えているはずです。』

チェーン・ポイズン <新装版>
本多 孝好
切ないタイトルに惹かれ男女の恋愛かと思い書店で手にした作品。 ひなびた団地で出会った2人の少女。お互い家庭環境に苦しみながら、出会い、別れを繰り返し強く惹かれ合っていく。女性同士の恋愛?に近いけど魂で惹かれ合ったパートナーに思えた。 残念ながら感情移入は出来なかった。

光のとこにいてね
一穂 ミチ
5人のワーキングウーマンの5つの恋物語。彼女たちは渋谷区神南にある『Closet』というセレクトショープで交差する。 5人の女性が様々な思いを抱えながらクローゼットの試着室に入って行く。 思い浮かべた『あの人』の為に、オシャレでありたい。綺麗でありたい。可愛いと言われたい。そんな思いを抱きながら鏡の前に立つ経験は1度は誰にもあるはず。 その中で、『可愛くなりたいって思うのは、ひとりぼっちじゃないってこと。』の章の中の 《感情は年をとらないのかもしれない。対処の仕方が大人になっていくだけで。》という言葉に胸をうたれた。 セレクトショップの店員さんのお客さんとの距離感や洋服を勧める時に望みを汲み取ってなりたい自分になれる様なアイテムを提案してくれる接客がとても読んでいて気持ちが良かった。 そして最後のエピローグが素敵!

試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。
尾形真理子
青山美智子さんの作品はこれで2冊目。 つまずいてばかりの日常の中、それぞれが耳にしたのはタケトリ・オキナという男性のポッドキャスト『ツキない話』 各章、登場人物がちょっとずつ繋がっている青山さんの作品は、今回もとても心がじんわりとした読後感を味わった。

月の立つ林で
青山 美智子
『北の狩人』読破以来の大沢在昌作品。 居酒屋『いろいろ』の店主円堂が、30年前に20億円のクラシックカーと共に消えた惚れた女を探す…バブル期に共に地上げで稼いだ中村から、地上げの神様として知れた二見社長の愛車の目撃情報。二見は当時円堂と恋仲だった君香を連れて失踪していた。円堂は捜索開始。中村は焼殺される。君香の姪と知り合うも、二見の車を狙うヤクザが襲来。円堂が信用していた付き合いの長いマザーのママがヤクザ側への情報リークが発覚。二見も車も見つかり君香にも再会。車は君香の姉へ譲渡、病の君香を憂うシーンで終。 30年もの間同じ女性を愛し再会…その後の話も読みたかったがそこは読者の想像…渋い円堂は『哀川翔』を浮かべながら読了。

晩秋行
大沢在昌
これからドラマ化される原作本。 5つの短編が独立しながらも、緩やかにつながって強い絆の物語が展開される。 映像では案内人役は上川隆也さん。(私の中では、阿部サダヲさんがお似合いかな) 死後一日だけ現世に戻れるが、会えるのは自身の死を知らない人のみ。たった一つの条件が大きな縛りとなる型破りな設定が独創的でとても良かった。 会いたい人のもとを訪れることのできる『さよならの向う側』そこにいるマックスコーヒー好きの牧歌的な案内人には、人に言えない悲しい秘密があった…故人にとって最良のラストを迎えるためのアドバイザーであり、誰よりも頼りになる協力者。彼の関わる五つの短編のひとつひとつに、避けられなかった切ない別れと心温まる再会があり、涙したり胸を熱くしながら読了。

さよならの向う側
清水晴木/いとうあつき
就活という一種の特殊な心理の下で企業の最終選考に臨む六人の大学生。就活の学生側、採用側の嘘とわずらわしさ。 人は月のように、他人には表面だけをみせている。人事がほんの短い時間で常に最適な学生を採用するのは難しい。 相手の本質を一瞬で見抜くテクニック…そんなものは採用者にはないだろう。波多野君・嶌さん・久賀君・袴田君・矢代さん・森久保君、皆が本当は良い人で良かった。 嶌さんのお兄さんが…! 見事な伏線回収でした。

六人の嘘つきな大学生
浅倉 秋成
堀川アサコさん作品2冊目。 前回の『定年就活』とは違ったファンタジー&ホラー作品。 就職浪人中の安倍アズサはひょんなことから山の上にある不思議な登天郵便局でアルバイトをすることになる。職場の人は個性豊かだし、お客さんもユニークな人ばかり。あの世に行けない幽霊の真理子さんに気に入られたり、狗山の神様につけこまれたりと大変なことばかり。なにかと小煩い青木さんがアズサが助けたカラスだったとは…(笑)死んだ人は消えてしまうのではないという作者の想いが詰まった優しい作品。 いつかわたしも功徳通帳をみるのが楽しみ!

幻想郵便局
堀川 アサコ