kazu
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2024年12月9日

読み応えがある点としては、ストーリーの視点がコロコロと変わっていく部分。最初は刑事の五代の視点で初期段階の事件解明がなされていく。『自白』というポイントを過ぎると、今度は加害者(犯人)の息子や被害者(弁護士)の娘へと移って行き、それぞれの立場から見える景色が描かれていく。 加害者の息子の目を通して、加害者家族としての社会的な制裁も1つの要素としてしっかりと描かれており、被害者の娘の目を通しては『真実』ではなく『事件の決着』を目指す警察や検察に対するもどかしさが描かれていく。 そして、次第に2人は自らの疑念を明らかにするために、お互いに歩み寄っていく。その2人に助け舟を出すように要所では刑事の五代も絡んでいき、さらに名古屋殺人事件の被害者家族も含めて客観的な視座を与えていく。 このように公平にそれぞれの視点における苦悩を描くことが、最後の犯人の『真実の自白』によって明らかにされる事実に対して+αの衝撃や感慨深さを与えていく作品。

白鳥とコウモリ(下)

白鳥とコウモリ(下)

東野 圭吾

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