
komemory
レビュー
日本国憲法制定をめぐる政府とGHQとの駆け引き。板挟み状態に置かれた法制局勤務の主人公の思いを伝えるには、本作のような小説仕立てが最適だろう。両者の攻防が昭和史好きを惹き込むこと間違いなし!日本国憲法は未だに改憲問題が続いているが、本作がそんな問題にどのような影響を与えるか。 昭和史好きには大変勉強になった。

ゴー・ホーム・クイックリー
中路 啓太
〈自由律俳句の伝道師〉虚池空白が「野良句」と呼ばれる自由律俳句に秘められた謎を解明していく連作短編。句に秘められた謎解きは、暗号解読ミステリとの融合ともいえる。いつも自由律俳句を投稿している自分としては、楽しく参考にさせてもらいました。続編が出たら間違いなく読みます!

虚池空白の自由律な事件簿
森 晶麿
乱歩賞史上最高といってもいいほどの完成度。通常殺し屋は敵役で最期はやられるのが普通だが、これはいわば敵役VS敵役、正義の味方が出てこないダークな世界。リアリティはともかく、プロの営業と殺し屋稼業をミックスさせた完全なフィクションだからこそ最後まで楽しくハラハラできた痛快作なのである。勧善懲悪ならぬ勧悪懲悪(笑)!?

殺し屋の営業術
野宮 有
又吉さんの多彩な発想力とヨシタケさんのかわいい表現力が相まって、本好きなら自分の本好き加減を知ることに。特に"整理番号27"は、自分自身に重なる部分もあり(これは又吉さんの体験談がもと!?)、感涙必至、そんな本でした。

本でした
又吉 直樹/ヨシタケ シンスケ
愛犬の看病日記として、毎日ほぼ同じことの繰り返しが書かれているが、日に日に弱っていくマージの様子を思い浮かべるといたたまれない。私も犬を飼っていたことがあるが、飼い主として責任を果たせたかどうか。考えさせられる一冊だった。

走ろうぜ、マージ
馳 星周
日本橋に進出した蔦屋は、ヒット作を次々に刊行するも、寛政の改革による締付けが忍び寄る……。第3巻も蔦屋の紆余曲折が読みやすく展開される。第4巻では「あの人」も登場を控え、クライマックスを迎える。首を長くして待とう😙

べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜 三(3)
森下 佳子/豊田 美加
アメリカ出身の著者が日本語で著した本作。「トラジェクトリー」「汽水」とも、母国と日本での思っていたこととのギャップを感じて暮らす苦悩と前向きに生きていこうとする主人公の姿勢に好感が持てる。著者自身もそうだったんだろう。

トラジェクトリー
グレゴリー・ケズナジャット
著者が慎太郎さんの母親目線で描く、短くも濃厚な生涯。巧みな文章の妙もあって、実に感動的で家族の強い絆が伝わってくる。 2023年のタイガースVに続き、今年も慎太郎さんが見守ってくれているその瞬間が近づいている。

栄光のバックホーム 横田慎太郎、永遠の背番号24
中井由梨子
バックホームの実際の映像を見て、鳥肌が立つほど感動を覚えた。病と闘い、復帰はならなかった横田さんの引退試合での伝説のシーン。短い生涯ではあったが、多くの人に勇気と希望を与えてくれた横田さんの功績はこれからも語り継がれ、病と闘う人たちの支えとなっていくだろう。私自身も大きな力をもらった、そんな自伝でした。 彼が見守ってくれていた2023年のタイガース日本一。そして映画が公開される今年もタイガースの快進撃。素晴らしい功績といえるでしょう。

奇跡のバックホーム
横田 慎太郎
戦後80年。戦中に日本全国にもたらされた惨劇の全容がわかる貴重な記録である。淡々と惨状の数字が語られるだけにその怖ろしさ倍増。しかしこれだけの被害が出ていながら、軍部は抵抗することしか考えてなかったのか……

日本列島 空襲の記録
平塚 柾緒
二・二六事件や第二次世界大戦などを通じて陛下と軍部との関係が、短編でわかりやすく伝えられる。ドキュメンタリー的な内容で陛下の胸の内が見えてくる。昭和史好きにも胸を打つ勉強になる作品。特に「地下鉄の切符」は本作ラストを飾るに相応しい感動作でした。

昭和天皇の声
中路 啓太
大相撲からタレントに転身というのはいくつも例があるが、彼のようにハリウッド進出したからこその本作。関取にはなれなかったが、その力士としての経験が生かされているのは「ザ・力士」な彼の風貌が恵まれていたのもあっただろうか。今後は「力士俳優」にも注目して応援していこうか。

SUMOOOO!! 流れ流れてハリウッド
雨宮圭吾
AIとの会話を取り入れるなど、これからの時代を先取りしたような実験的な作品。文体からして好き嫌いが分かれそうだが、未来を見据えた感覚が支持されたのだろう。これからはこういった作品も増えてくるのだろうか。

東京都同情塔
九段 理江