balsamio
レビュー
急性の痛みは生存にとって重要(無痛症は成人を迎えるのが困難)だが、慢性痛は脳の回路固定が要因となることが多く、回路の組み換えで緩和し得る。靴越しに足に棒が刺さって麻酔も効かなかったが実は刺さっていなかった、三ヶ月の電気マッサージで症状ふぁ緩和したが電源が入っていなかった、幻肢痛が脳トレで治るなど、いかに脳の働きが重要かを語る。
痛み、人間のすべてにつながる
モンティ・ライマン/塩崎香織
社会的要因の様々な疾病を扱う。スウェーデンにいる難民の眠り病、「思い込み」からの歩行困難、コロンビアのHPVワクチン疑惑、アメリカの学校でマスコミが介入した「集団ヒステリー」など、分類とルーピングにより集団的に症状が悪化していく状況を紹介。身体、心理、社会が絡み合って病気(基準からの逸脱?)が生まれる。
眠りつづける少女たちーー脳神経科医は〈謎の病〉を調査する旅に出た
スザンヌ・オサリバン/高橋 洋
来たるAI時代の社会、権力、政治、国家についての展望と警鐘。過去の認知革命、農業革命、産業革命と異なり、AI革命は物理的な制約がなくいくらでも集約可能なため、従来をはるかに超える断絶の可能性がある。既にフェイク、情報操作は常態化している。大きな物語をAIが紡ぎ出すのか? そのときの人類の存在意義はいかに?
NEXUS 情報の人類史(仮) 下
ユヴァル・ノア・ハラリ/柴田 裕之
大部で読了に時間がかかり過ぎたが、面白かった。課税に対する実負担は誰かということにさえ経済学は答えを出せていないという指摘は新鮮。相続税を死亡税と言い換えるだけで印象は全く異なる。
課税と脱税の経済史
マイケル・キーン/ジョエル・スレムロッド/中島由華
平時であれば変な主張と一蹴するところが、この時代なので説得力をもつ。宗教の没落とともに欧米社会から大きな規範が消え、ゾンビ化、ゼロ化に至る。ロシア、アジアは双系性ではなく父系制という家族構造も、社会の分析に本質的という主張。米国は、基軸通貨ドルの力でのみ覇権を有し、工業、軍事の生産力による実体としてのパワーはもはや失われた。
西洋の敗北 日本と世界に何が起きるのか
エマニュエル·トッド/大野 舞
重農主義と重商主義の路線対立は18世紀のフランス、イギリスの緊張関係によく表れている。また、保護的な重商主義と自由貿易主義との対立関係もある。トランプ関税は歴史を遡るとありがちなことも分かった。アダム・スミスがローマストア派を教えていた学者で、自由放任とは程遠いエリート賢人政治を範としていたというのも興味深い。
〈自由市場〉の世界史
ジェイコブ・ソール/北村京子