
ぶたにく
レビュー
自分は伊坂幸太郎さんの作品が難しかったのですが、この作品は読みやすく尚且つ友情が強く描かれていたので好きでした。ここ最近読んだ本で一番かもしれません。どの作品の終わり方に全部鳥肌が立って、とても感動しました。自分の人生にこのような思い出が一つもないのが少し悔しく感じましたし、同時に(フィクションですが)彼らの思い出の片鱗を少しだけでも頂けた事が嬉しくこの上ないです。読み終えたとしてもきっと自分はまた読み返したくなると思う作品でした。
逆ソクラテス
伊坂 幸太郎
みんな「気づいた頃には事が大きくなっていた」というもので、客観視している読者は安全地帯だが、いつ似たような環境に陥るかは分からない上に、陥ったとしてもすぐに「気づく」ことが出来て、出来たとしても対処に移せるかは分からない、そんな際どいような話を読んだ感覚でした。 ミステリーとしても上質であり、物語としても自らの人生を省みないとヒヤヒヤするものでした。
許されようとは思いません
芦沢 央
公式が多い本なので前半は断念しやすい難しい本でしたが、後半に向かうに連れて公式が減っていくので、完璧に公式を理解出来なくとも感覚的に理解出来るようになり、難しくもなくなりますし面白かったです。動物の見方が少し変わりました。興味があって辛抱強い方は読めると思います。
ゾウの時間ネズミの時間
本川達雄
終盤に畳み掛けるようにスマホの影響を列挙されるので、後退ってしまうような文面でした。でも個人的にそれが面白かったです。 表も丁寧に見比べる本なので、時間がある時に読んだ方が良いです。基本的に読みやすいので不安にならなくて大丈夫です。 著者の方もお気づきのように、少し疑問点も浮上する本だったので、更にブラッシュアップされた続編が出たら読みたいなと思います。
スマホが学力を破壊する
川島 隆太
内容はそこまで難しくなく、翻訳も読みやすいので抵抗感無く読めました。カタカナや見慣れない言葉が多く話のまとまりも多いので、長めに読むことになる故に、時間がある時に読むことをオススメします。 様々な神話が、様々なアニメ等の原作やオマージュになっているので、興味がある方は是非この本を。
世界の神話
沖田 瑞穂
初めて文章だけで食欲が唆られました。 マッシさんの表現力は途方もなく、正にこういう表現があっているなと感じる節々ばかりで、日本とイタリアの相違点からも読み応えがあり読む手が止まりませんでした。着眼点も日本の渦中に居ると分からなかった視点ばかりで、異国情緒も感じられました。 自分は、この本を読んで、日本に居る日本人であるのに日本食の魅力に全く知らず気にもせずに、日々食欲を満たすが為にただ食べていて、本当に無粋で無駄な事をしたと自省を促してくれました。この本を介して、自分が食への心持ちを変えるべき時だと思いましたし、日本食を通じて日本の風土や様々な人の信念を感じられ、「いただきます」「ごちそうさまでした」の挨拶の意味を再確認できました。
イタリア人マッシがぶっとんだ、日本の神グルメ
マッシミリアーノ・スガイ
読み始めはほんの少しの興味程度の原動力でこの本を読み進められるのかとても不安でしたが、すぐに杞憂として凋落してくれました。 物理だけでなく、宇宙すらも全くと言っていほど理解力が乏しい自分でさえも、とても面白く感じられ、それ故にページを捲る手が止まらず、分からないまま終わる事がなく、読者を置いてけぼりにさせないやさしい本でした。 著者の方だけでなく、イカロスに携わる人やライバルの人の、互いの熱いスポーツマンシップのようなものや、宇宙に対する大きな敬愛と留まるところを知らない興味が、読者の自分にも伝染して「こんなにも面白い仕事なのか!」ともっと知りたくなったので、宇宙に関する事に少しだけでも興味を持つ初学者の為の本だと思います。 読了後の私もイカロスが可愛く思えました。この本のお蔭でこれから出てくる宇宙開発も楽しみで仕方ないです。 イカロスは立ち位置的にはサブで、しかもメインに時間と労力と費用がかかっている故に、失敗できないしさせてくれないのに、時間内に費用も抑え、影で世界初を成し遂げるかっこよさは言葉にできません。その感情がドッと溢れ出る本でした。読めて良かったです。
宇宙ヨットで太陽系を旅しよう
森治
西洋画だけじゃなく世界史や宗教を全く知らない自分でも楽しく理解できたので、興味が少しでもあるならば楽しく読めると思います。 絵画の一部分だけを扉で見せるので、絵画を見るだけよりも更に深く物語性と画家の人間性、もしかしたら…という部分も考える余白を楽しめました。今を生きている自分と過去を生きてきた画家の、時代背景に影響されている価値観から想う全く理解できない事や、大して進化していない脳から派生した思考だから変わらない考えも知れたので、人間を立体的に見れました。
欲望の名画
中野 京子
心に突っかかっていた何個かの蟠りが、著者の方の語彙と表現によって流れていきました。あの時抱いていた言葉にできない疑問も、ここで消化されると、無駄ではなかったのだと思いました。始めは少しついていけるのか不安になるような、先生と生徒の親密度だったのですが、内容にフォーカスを当てて共に考えていくので、全く気にならなくなります。内容も「言われてみれば不思議だ」とか「誰でも一度でも抱く疑問」だったり、「これから起こるかもしれない為に考えておくべき話題」だったりと興味深い話ばかりで、あっという間に読み終わりました。
10代の真ん中で
村瀬 学
擁護はしたくなくても、してしまう様な人生を送った信者や、誰もが羨む地位と学力があるのにすがってしまった信者ばかりで、共通して言えるのが「皆、真面目で責任感のある、意味を見出そう」とする人たちで、どうしても切っても切れない様な距離感を感じました。誰もがカルト宗教の被害者にも加害者にもなれると思い知りました。これを読んで、直接的にカルト宗教を知るのは危ないので、正しく怖がって距離を置いていきたいと思いました。ふとした疑問や勘も大切にしていきたいです。
「カルト」はすぐ隣に
江川 紹子
アメリカらしい広大な土地を思春期というエネルギーで駆け回る彼らを、個人的に羨望してしまうし、正直哀れで成りたくもない対象だった。 学校で合同宿舎の封鎖された空間から築き上げた関係は厄介でもやはり憧れるし、面倒だと言ってた先生の勉強や講義は最終的に有意義なものになっていて、良かった。
アラスカを追いかけて
ジョン・グリーン/金原瑞人
これを読む前に「奇数章のウィル・グレイソン」と「偶数章のウィル・グレイソン」は別の方々が書いて、二人のウィルは別の人物だということを念頭に置かないと混乱するので、念頭に置いて読む事をオススメします。知らずに本を読むと、困惑して読む気を無くしてしまうかもしれません。 お話は二人のウィルの周りの登場人物は明るく、二人のウィルは暗めなので深く考える人は二人のウィルの気持ちが理解できます。アメリカンな冗談もあるので学べますし、最後は素敵でした。多感期の様々な愛の形を見る事ができます。
ウィル・グレイソン、ウィル・グレイソン
ジョン・グリーン/デイヴィッド・レヴィサン
文学が好きでも敬遠しがちな古典。 難しく今じゃ使わない言葉に恋愛ばかりな話。 そういう印象が、この本を読んでから見方がグルっと変わり、古典文学や平安時代を生きた人達をひとしお読みたいし知りたいなと思えました。 著者の推測と、彼女らの文章や歌から滲み出る人となり、それらを照らし合わせ読んでいくと分かりやすく時を感じない程彼女らを身近に感じられます。 その頃の時代情勢が世知辛く想像だけでも胸が苦しくなったり、そんな中でも物語を通じて自分を見出してきた彼女らが愛おしかったりと、「いとをかし」内容の本でした。
平安ガールフレンズ
酒井 順子
中学勉強もまともにやっていなかった私ですら、とても簡単に読めて興味が更に湧き出る本でした。素粒子物理学の話ですが、遠そうで実は近い宇宙の話、ちょっとした科学の話、先生のウィットもきいていますし、難解な図は無く可愛らしく分かりやすいイラストもあるので読んでいて楽しいですし、更にこの世界を読み進めたいと思った1冊でした。
宇宙のはじまり
多田 将
詩的な文章で書かれているので、いつもの淡々とした長い文章で書かれた本を読むのとは違う良さと複雑さがありました。長い文章を読むというのが苦手な人にはその部分はオススメですが、詩的な文章なので過去や今が混雑していますし、外国の方の名前なので覚えづらくはあります。ですが、人間慣れていくので耐えれば入っていきやすかったです。 認知症というもの、家庭内暴力というものを個々で語られがちですが、時が経つにつれてマーラが少しずつ一人一人の心情に気づけたり、楽しい事や過酷な事も自省していたりと個人的に節々に感情移入してしまいました。
タフィー
サラ・クロッサン/三辺 律子
著者の方の奥さんが「自閉症の子は津軽弁を話さない」と言って、著者の方も負けじと反論して夫婦喧嘩に進み、著者の方が覆そうとして研究に発展したのが始まりです。個人的にはこの始まりを知ってから読むと一層興味を持ちやすいかと思います。 自閉症に全く知識の無い人でも、研究内容をとても分かりやすく噛み砕いて提供してくださっています。図や絵もあります。自閉症の特徴から自閉症が方言を話さない、自閉症が共通語ばかり話す事まで事細かく述べているのでとても面白いです。 自閉症の方が近くに居ない人でも、読んでおくときっと更に人に優しくなれるかと思います。 あと研究職に就きたい方も読んでおくといいです。情報が溢れている故に簡単に判別しないと脳が疲れてしまう日々です。そうだとしても何かしらの疑問は取っておくと良い人生の材料になるかと思いました。
自閉症は津軽弁を話さない 自閉スペクトラム症のことばの謎を読み解く
松本 敏治
是非日本国内だけでなく世界の人にも読んで欲しい本。そして日本の学生に読んでもらい読書感想文やディスカッションをしてほしい。私がそうしたかったと強く思う本でした。 アメリカらしいディスカッションやジョークも感じられるし、色々な文献から大統領の発言から示唆される事を同い年または下の子達がディスカッションしたり調べたりしている事に感動を覚える。 私達が学んだ教科書やテレビ特集、ネット記事だけでは知り尽くせない事だったり考え込まれている事だったりと、日本人だからこそ考えなくてはならないし議論しなくてはならないし、原爆投下肯定派の意見も聞いた方が絶対為になると思う。 原爆は忘れてはならないし、後世に伝えるだけでなく、なぜ原爆が2回も落とされたのか、なぜ日本だったのか、なぜ核兵器は今も尚持っている国が存在しているのかも是非とも考えてほしいし、自分もメタ認知する為にこの本を再読し原爆について更に知っていこうと思う。
ある晴れた夏の朝
小手鞠るい/タムラフキコ
人間の老化と癌との因果関係があることに驚いた。人間は老化して歳と共に癌になる確率が上がる。 本書には、(個人的要約)老化は癌を防ぐもの。老化が直接的に癌にさせる訳ではなく、日々癌に近い存在はあって若い時は防げたものが老化によって防ぐ為の遺伝子等は少なくなり、それによって長く滞在してしまった癌が私達に影響させるんだと言っていた。世界はまるで老化を蔑み、あんなものになりたくないと避けるが、実は老化によって守られていたのだと思うと、人間の細胞やDNAやタンパク質等の密かな頑張りに感激したし、老化というものも愛おしく感じました。 見えないけれど、バタフライエフェクトが私達の身体の中で日々起こっているので、私も見えない小さな事も何かを防いだり助けたりしていると思って生きていきたい。
ネタバレを読む
寿命はなぜ決まっているのか
小林 武彦
哲学的書でペシミズムを感じる議論というか持論(白羽の持論)を聴く様な本だった。 マイノリティの人にうけるでしょう。何かしら、この世の仕組みに疑問や疑念を抱き、生きづらさを感じる白羽と、主人公の型に嵌まるからこそ自分を確立して生きられる人。似ても似つかない様な二人だけれど、白羽の持論の方向性は主人公と近く、主人公の型が白羽にとって居心地の良いと言うよりも、利便性のある世界なのかなって感じました。個人的に好きな類です。哲学的なものを好きだったらオススメです。
コンビニ人間
村田 沙耶香