匿名ユーザー
レビュー
女性が着物を着て過ごした最後の時代に、芸術的なまでに斬新な帯をデザインした男の物語。豪華絢爛な帯、京都大原の御殿、政界財界芸能界の華やかな人脈にまつわる話が縦糸、横糸のように繰り広げられ、やがておなかいっぱいになる。
大原御幸 帯に生きた家族の物語
林 真理子
ずっと読みたかった魔女シリーズ、最初の巻。魔女のその後のスーパーぶりを知ってから読むと、魔女にも弱い時代があったことが感慨深い。タイトル「笑窪」に込められた謎がわかると、魔女にならざるをえなかった主人公の痛みが感じられる。
魔女の笑窪
大沢 在昌
メディアを使った大衆撹乱作戦。今リアル世界で政治を巡って話題になっている「何が本当か分からない」状況がこの本の中で繰り広げられている。 複数の謎が明らかにされていく過程のすりりんぐなこと! 巻末の感想は俳優の井上順さん。 森から来た少年の秘密は明かされないまま終わるのも余韻を残してしゃれている。
森から来た少年
ハーラン・コーベン/田口 俊樹
四つの短編の登場人物たちのそれぞれの「卒業」。卒業に至るまで、どれくらいの時間がかかるかは、誰にもわからない。卒業できるかも、わかっていなかっただろう。卒業する気もなかったかもしれない。 思うようにいかないことがあり、苦しみに胸かきむしられ、いたずらに時間を消費し、孤独になり、もがき、助けを求め、もがいた先に、こんな「卒業」があるのかと、読者の胸にあたたかく迫るものがある。
卒業
重松 清
夜の床屋。ほのぼのとしたストーリーを期待して裏切られる。誘拐犯が悪事遂行のために即席で開いた「夜の床屋」。 本著に収められる短編は、どれもどこか浮世離れした空気を醸しながら、最後は科学的に解明され決着を見せる。不思議な雰囲気の本だな、と思って最後の短編まで読んだ時に、自分の解釈は見事に裏切られる。科学的に解決したと思われたことが、一気にすべて浮世離れした霧に包まれてしまう。読後に頭の中でもう一度最初から反芻している自分がいる。
夜の床屋
沢村浩輔
ホームレス中学生の兄が綴った本。家長として自分のことは後回しにして弟と妹を支えた兄。自分が手放した夢を叶えた二人を羨ましく思いながらも、見守り支え続けるお兄さん。その謙虚さと賢さと優しさに敬服した。
ホームレス大学生
田村研一
登場人物が次々死んでいく。怒りや絶望に胸をかきむしって。この作者の抱えている思いは、自分の心につきまとっているものにとても近いと感じる。でも、胸をかきむしりながら生き続ける登場人物たちも見てみたい気がしている。
永遠の仔 4 抱擁
天童 荒太
ジャニーズ問題、日航機墜落、日本経済の失墜、一見するとバラバラに思われるこれらの事柄がつながっているとすると、日本の病巣は相当深い。森永さんの綴った本著の重さをどう受け止めたらいいのか。
書いてはいけない 日本経済墜落の真祖
森永 卓郎