博士の愛した数式

博士の愛した数式

小川洋子
新潮社 (2005年12月1日発売)
ISBN:9784101215235
本棚登録:612

作品紹介・あらすじ

「ぼくの記憶は80分しかもたない」博士の背広の袖には、そう書かれた古びたメモが留められていたー記憶力を失った博士にとって、私は常に“新しい”家政婦。博士は“初対面”の私に、靴のサイズや誕生日を尋ねた。数字が博士の言葉だった。やがて私の10歳の息子が加わり、ぎこちない日々は驚きと歓びに満ちたものに変わった。あまりに悲しく暖かい、奇跡の愛の物語。第1回本屋大賞受賞。

感想・レビュー (11件)

筆者の数学や野球への造形が深いのに驚いた。 自分は算数や数学が苦手で記載は一部理解できない場面もあったが不思議、美しいと感じる場面もあった。博士のルート、大人が子供に対する接し方、愛情にほのぼのとしたり、教えられたり、決してドキドキ、ハラハラする内容ではないけど、読んでて気持ちが優しくなる内容の本だった気がする。

事故により80分しか記憶がもたない博士と、その家政婦として働く私とその息子ルートの温かくて寂しいお話。前日の記憶はなくなり、毎日が初対面の私とルートに対して、数学を通して美しい繋がりを見出す数学への憧憬と、またルートと私に対する分け隔てない博士の接し方には、記憶がなくなるからこそ人間本来の慈しみに溢れているように思う。毎朝記憶障害の事実を自分のメモで知る博士の悲しみと、その生活や身なりを気にしない博士に対する他人の接し方を読み進めていくことで、私たちが当たり前に思って生きていることへの懐疑を感じずにはいられない。起承転結が大きくあるわけでないのに、深く印象に残るストーリーだった。

記憶が何度リセットされても、寛容に慕情を持って博士に接する家政婦とその息子と、何度記憶を失っても大切な部分を決して忘れないよう努力する博士との関係性に心暖まる。何度記憶がなくなろうとも博士と2人が過ごした時間は愛情に溢れ、暖かな木漏れ日のような日々だったのだろう。

心地よいペースだった。家政婦さん、ルート、博士の3人ともに愛着が湧いた。

数学博士、家政婦とその息子の3人を中心に登場人物たち全員人柄が良くて読んでいて気持ちいい、 面白くて早く読み終えた。

また新たな世界をみた気がする。数字の中に意味を見いだす博士の世界。誰もが大切に思う世界がある。その中で人に影響を与えることがある。家政婦さんは博士の世界に影響を素直に受けた。誰かに勝ちたいとか、認められたいとか人より優れていたいという気持ちのない綺麗なものだった。

80分しか記憶がもたない博士と家政婦の話。ルートの前の博士がカッコいい。

ルートと江夏がどうしても合わなかったけど、この本好き

いいね。心暖まる。これぞ小説。

博士と家政婦と息子のルートの3人の物語