作品紹介・あらすじ
僕の祖父には、秘密があった。
終戦後と現在、ふたつの時代を「カレー」がつなぐ
絶品“からうま”長編小説
ゴミ屋敷のような家で祖父・義景と暮らすことになった孫息子・桐矢。カレーを囲む時間だけは打ち解ける祖父が、半世紀の間、抱えてきた秘密とはーーラスト、心の底から感動が広がる傑作の誕生です。
【感動の声、続々!】
「ひとの持つどうしようもなさ、そこから生まれる愛おしさ。味わい深く余韻ある作品...
感想・レビュー (6件)
「食え。 腹が減ってるときは難しいことを考えるな。」 過ぎ去った時代を生きた人々の物語っていうのはたいてい美しいんです。だって、遠くにあるから。 過去を語る行為には、いつだってある種の乱暴さがつきまとう。そこに流れていた時間を、勘定を、言葉によって切り取って、つなぎ合わせて、固定してしまう。言葉によって語られる過去は、ピンで止められた蝶の標本のようだ。ただそこで生きていた頃とはすこしだけ違うなにかになってしまう。 おじいちゃんの性格にズレが生まれて切なさを感じるけど、じんわり淡々と、という美しく、美しくもない家族の時間を表していると思った。とてもよかった。
主人公の正しさがいい。
ものすごくドラマチックな物語ではないのだけれど、なんだかんだで最後まで読んでしまった。 ただ、『水を縫う』ほどの完成度はないか。 寺地はるなさんの小説は、登場人物がみんな少しだけずるかったり、せこかったり、どうしようもなかったりする。そのバランスの匙加減が絶妙。

