
レビュー (6件)
「食え。 腹が減ってるときは難しいことを考えるな。」 過ぎ去った時代を生きた人々の物語っていうのはたいてい美しいんです。だって、遠くにあるから。 過去を語る行為には、いつだってある種の乱暴さがつきまとう。そこに流れていた時間を、勘定を、言葉によって切り取って、つなぎ合わせて、固定してしまう。言葉によって語られる過去は、ピンで止められた蝶の標本のようだ。ただそこで生きていた頃とはすこしだけ違うなにかになってしまう。 おじいちゃんの性格にズレが生まれて切なさを感じるけど、じんわり淡々と、という美しく、美しくもない家族の時間を表していると思った。とてもよかった。
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ものすごくドラマチックな物語ではないのだけれど、なんだかんだで最後まで読んでしまった。 ただ、『水を縫う』ほどの完成度はないか。 寺地はるなさんの小説は、登場人物がみんな少しだけずるかったり、せこかったり、どうしようもなかったりする。そのバランスの匙加減が絶妙。
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