レビュー (4件)
図書館本読了後に続けて自前の文庫本を読む。どんだけ好きなのか。 あちこちにヒントめいた記述はあるが、最終的な解釈は読者に委ねられているようで、謎解きの類いはない。二度目くらいまでは不可解な雰囲気を楽しめば良いのだろうと考えて、辻褄合わせてのような読み方をしなかったためか、読む度に前回は気づかなかったことが見えてくる。 今回は「ただ一度きりの朝」を「ただ一度きりのの生」と読み替えてみたらどうなるか、と考えてみた。大橋くんは所謂「信頼できない語り手」で実はもう亡くなっているという読み方はどうだろうか。
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久しぶりに小説を読めた。自分も随分別の世界に彷徨っていたことに気づいたような気分。でも小説は常に傍にあったことにも。 内田百閒や漱石の夢十夜などを思い浮かべさせられる、仄暗く不穏で、でもどこか心地の良い酔いのような読感のある小説。登美彦氏は偉大なり。
スティーブンキング的な、不穏な雰囲気が漂う本。淡々と書かれているし、よくわかんない表現(「冬のビー玉」のような匂いなど)あるけど、そういうものかと思わせ、スルスル読ませる感じ。 物語の意味はよくわからないけど、京都ということもあり、また物語の序盤に夜行という言葉は夜行列車か百鬼夜行なのか、何でしょうね、などというやりとりがあったことから夜という時間と空間の持つ特異な性質を描着たいのかなと思った。陰翳礼讃にも描かれる昔の「夜」は今と違って真の闇であったことから、嘘か真か見分けもつかず、魑魅魍魎たちも見えてくるような世界だったのだろう。 ストーリーの全体としてのどうなりましたよ、ということはよくわからずネットで解説みたいなものを何個か見てみたけど、まぁ夜という時間と同じようにこの作品の答えもある種の膨らみを持たせて終わることが狙いなんだな思い、それで納得することとした。
