薄雪
薄雪

2025年1月25日

2022年、本屋大賞を取った作品です。 他の本屋大賞作品も何作か読んではいますが、作品の完成度という点でずば抜けていると思います。話の展開が秀逸で600ページあるのですが4日くらいで一気に読んでしまいました。 1942年、イワノフスカヤ村に住むセラフィマは、母と一緒に猟をして暮らしていた。ある日、村に帰ろうとするとドイツ人の一軍に村が占領されようとしているところ目撃する。戦おうとする母は、ドイツ人の狙撃手に撃たれ、セラフィマも陵辱されようとする。そこにロシア軍の一団が現れ、セラフィマは救われる。ロシア軍のリーダーであるイリーナに強い言葉を投げかけられるセラフィマ。憎しみを支えとして、狙撃手としての教育を受けていく。 訓編学校では美しいシャルロッタ、カザフ人のアヤ、母のように優しいヤーナ、そしてウクライナ出身のコサックであるオリガと知り合う。 訓練学校を卒業したセラフィマは、皆と一緒に実戦であるウラヌス作戦を経験し、そして決戦都市スターリンググラードに乗り込んでいく。どんな悲劇がこの先待っているかも知らずに。 この作品は、戦争小説なのですが、作品を際立たせてるいるのが、それを女性という視点から書いているところです。男性なら、戦争に行くことも帰ってきて英雄と讃えられることも当たり前の時代であったけれど、女性はそうではなかった。戦争を潜り抜けた女性であっても、除隊後周りの視線を扱いから冷遇を受けてきた。そしていつの時代も戦争という状況の中で、女性は弱い立場に置かれて苦しんできた。 同志少女よ、敵を撃て。本当の敵はここにいる。 それはおそらく、特定の民族や国であろうはずはなく。また、男性や女性といった性別でもなく、戦争という異常な状況下で発揮される人間の本質なのだろうという。 もっと吉村昭の書いたバリバリの戦史小説のような作品かと思っていたのですがそうではなかったです。キャラクターも生き生きとしていて、とても読みやすかく、作者逢坂冬馬の優しい真面目で熱い人柄が伝わってくるような作品でした。

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同志少女よ、敵を撃て

同志少女よ、敵を撃て

逢坂 冬馬

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