作品紹介・あらすじ
扁桃体が人より小さく、怒りや恐怖を感じることができない十六歳の高校生、ユンジェ。そんな彼は、十五歳の誕生日に、目の前で祖母と母が通り魔に襲われたときも、ただ黙ってその光景を見つめているだけだった。母は、感情がわからない息子に「喜」「怒」「哀」「楽」「愛」「悪」「欲」を丸暗記されることで、なんとか“普通の子”に見えるようにと訓練してきた。だが、母は事件によって植物状態になり、ユンジェはひとりぼっちに...
感想・レビュー (3件)
不覚にも泣いてしまった。一気に読み終えてしまう読みやすさ。「共感」 以下、心に残った表現。 チップ。思いがけないご褒美みたいなもの。自分の悲しみを人が一緒に悲しんでくれるのは嬉しいことだと。 本屋は何千、何万という作家たちが、生きている人も死んだ人も一緒になって押し合いへし合いしている、すごく人口密度の高い所だ。でも本は静かだ。手に取って開くまでは、まるで死んでるみたいに黙りこくっている。そして、開いた瞬間から話し始めるのだ。ゆっくりと、ちょうど僕が望む分だけ。 僕たちは、黒板消しやチョークと同じように、だだ学校を構成する多くのもののうちの一つでしかなかった。学校という社会の中では、誰だって本当の自分ではいられず、与えられた役割を演じるだけの小さなパーツでしかないのだ。 あまりにも遠くにある不幸は自分の不幸ではない。近ければ近いで恐怖と不安があまりにも大きいと言って誰も立ち上がらなかった。 人間を人間にするのも、怪物にするのも愛と思うようになった。「愛とは種に注がれる水と日差しのようなもの。人にもう一度注がれる視線とか、決めつける前になぜそうなったのか質問してみること、それが愛なのではないか」 感じても行動せず、共感するといいながら簡単に忘れ。
先天的に感情が欠落した少年と、親とはぐれ特殊な環境で育った不良少年2人の成長物語。 共感や愛について熟考させられる良作で、途中胸を抉られる様な言葉には衝撃も。 『愛とは、"種"に注がれる水と日差しのようなもの。』 ひたすら素敵な言葉。

