レビュー (2件)
「ぬ」が消えた世界では、三女の絹子も消えていた。実態が消えても、記憶から消滅するまでには少しばかりの猶予があります。「彼女の化粧をした顔を一度見たかった。では意識から消えないうち、その残像に薄化粧を施し、唇に紅をさしてやろう」
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筒井康隆「口紅から残像を」読了。 ずいぶん久しぶりの筒井康隆。 20代の一時期ハマって読み漁っていた作家さん。なのだがこの口紅から残像をは未読だった。しばらく前にネットで話題になった作品なのでどれどれと手を出してみた。読み始めて「ああこの文体、この感覚、これぞ筒井康隆だ」と懐かしく、そして少しあの頃をら思い出してしまった。若かったなあ。 閑話休題 内容はとても実験的な内容。 短い話が一つ終わるごとに、 だいたいひとつ文字が文章から消えていく。 そしてその文字を使っていた物体や人物も字がなくなることで存在できなくなったら消えてしまう。 そういうとあっという間に話が終わりそうだが、そこが日本語の面白さ。自分を指す言葉一つとっても、わたし、おれ、わたくし、われ、自分、小生、おのれ、ぼくなど様々な読み方がある。そこに筒井康隆さんの言い回しの上手さが絶妙にミックスされ文字が消えてるのに本の半分以上進むまであまり違和感ないほど小説が成り立っている。 これはすごい。 もしかしたらこの小説、 日本語だから成り立つのだろうか。 いややはり筒井康隆の腕あってこそなのだろうな。 こういう実験的な内容も含めた また筒井康隆だなあと。 うん、久しぶりの筒井康隆。 感想はやっぱりこの人面白い。
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