作品紹介・あらすじ
運命は、かなり手荒に、人生を引き回すことがあるーー。
ローマを逃れた傷心のアントニオは、ナポリ、ポンペイ、アマルフィ、再びローマ、さらにヴェネツィア、ミラノと各地を遍歴する。
新たな出会いと別れ、すれ違いと再会、そして恋の行方……。
即興詩人の旅と数奇な青春を、イタリアの美しい名所を舞台に描いた名作。
〈解説〉森まゆみ
感想・レビュー (1件)
この本は何十年も前から美しい小説だと聞いていたが、森鴎外の文語訳が読解できず長年諦めていた。 書店で安野光雅さんの口語訳を見つけ飛びついて買った。 イタリアの美しい風景、アントニオとベルナルドの友情を培う経緯。歌姫アヌンツィアタを愛するも、恋敵となったベルナルドとの葛藤に苦しむアントニオ。旅に出た彼は、数々出会った人に救われ、いつしか慰められていく。すれ違いを重ねてようやく再会したアヌンツィアタは、アントニオを愛していたと告げたが、なぜか身を引いていく。その後暫くして病死。傷心のアントニオは、以前旅先で出会ったララと再会し、結ばれる。盲目だった少女は、すっかり目が見えるようになっていたのだ。 最後の最後まで美しい風景と心理描写で終わる物語は、一枚の絵画としていつまでも私の心に残っている。 不運と幸運、出会いと別れ、信頼と裏切り、絶望と希望…人生のあらゆる経験をした後に得られたものは、磨き上げられた水晶玉のよう。アントニオとララでこの水晶玉を守っていくことだろう。 安野光雅さんはぜひ森鴎外の訳を読んでほしい、とのこと。 いつかチャレンジしてみたい。