ある男

ある男

平野 啓一郎
読者数: 23
発売日: 2018/9/27
出版社: 文藝春秋
ISBN: 9784163909028

レビュー (1件)

自分の中でいちばんの拠り所として存在する自分という身体が自分をじぶんたらしめるその存在自体を認識するときに感じる分かつことのできない過去の記憶や、その自分の性質によって向けられる他人からの視線や評価が苦しくて気持ち悪くて耐えられないとき、その自分を捨てようと思って捨てられたら、幸せになれるのだろうか。過去をどうやって自分のなかで納得させていくのか、あるいは、納得させることができない過去を、すべて捨てて生きていくのか、隠して生きていくのか、(できるのかどうかわからないけども) どうやって幸せに向かって生きていくのか。おもしろかった。 「愛にとって、過去とは何だろうか?」「愛に過去は必要なのだろうか?」城戸が自問したことばを、何度も考えさせられる。 「なりすましたあの数時間の、言い知れぬ悦びが忘れられなかった。」 「人生、良いことだらけじゃないから、いつも“三勝四敗”くらいでいいかなって思ってるんです。ちょっといいことがあるだけで、すごくうれしいんですよ」後藤美涼 「ストンと力が抜けたみたいに両膝をついちゃって、そのまま突っ伏して、腹ばいで泣くんですよ。広い公園の真ん中で。」柳沢 「人生は、常に過去と未来に押し潰されそうになっていたに違いなかった。彼は過去に対しては負い目があり、未来に於いては、父親の罪を反復するかもしれない」 「また愛し直すんじゃないですか?」 「悲しみが極まって、追い詰められて、変身せざるを得なかったのではないか。」 ある男を調べ、真実をつきとめていった結果は、その人が未来に残したもののこれからを想像することにしかならないが前を向いている。 「ぬけがらにいかに響くか蝉の声」←かっこよすぎ

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