ある男

ある男

平野啓一郎
文藝春秋 (2018年9月28日発売)
ISBN:9784163909028
本棚登録:203

作品紹介・あらすじ

愛したはずの夫は、まったくの別人であった。 「マチネの終わりに」から2年。平野啓一郎の新たなる代表作! 弁護士の城戸は、かつての依頼者である里枝から、「ある男」についての奇妙な相談を受ける。 宮崎に住んでいる里枝には、2歳の次男を脳腫瘍で失って、夫と別れた過去があった。長男を引き取って14年ぶりに故郷に戻ったあと、「大祐」と再婚して、新しく生まれた女の子と4人で幸せな家庭を築いていた。ある日突然...

感想・レビュー (2件)

自分の中でいちばんの拠り所として存在する自分という身体が自分をじぶんたらしめるその存在自体を認識するときに感じる分かつことのできない過去の記憶や、その自分の性質によって向けられる他人からの視線や評価が苦しくて気持ち悪くて耐えられないとき、その自分を捨てようと思って捨てられたら、幸せになれるのだろうか。過去をどうやって自分のなかで納得させていくのか、あるいは、納得させることができない過去を、すべて捨てて生きていくのか、隠して生きていくのか、(できるのかどうかわからないけども) どうやって幸せに向かって生きていくのか。おもしろかった。 「愛にとって、過去とは何だろうか?」「愛に過去は必要なのだろうか?」城戸が自問したことばを、何度も考えさせられる。 「なりすましたあの数時間の、言い知れぬ悦びが忘れられなかった。」 「人生、良いことだらけじゃないから、いつも“三勝四敗”くらいでいいかなって思ってるんです。ちょっといいことがあるだけで、すごくうれしいんですよ」後藤美涼 「ストンと力が抜けたみたいに両膝をついちゃって、そのまま突っ伏して、腹ばいで泣くんですよ。広い公園の真ん中で。」柳沢 「人生は、常に過去と未来に押し潰されそうになっていたに違いなかった。彼は過去に対しては負い目があり、未来に於いては、父親の罪を反復するかもしれない」 「また愛し直すんじゃないですか?」 「悲しみが極まって、追い詰められて、変身せざるを得なかったのではないか。」 ある男を調べ、真実をつきとめていった結果は、その人が未来に残したもののこれからを想像することにしかならないが前を向いている。 「ぬけがらにいかに響くか蝉の声」←かっこよすぎ

最後泣いた。 人ってその人の過去も含めて愛してると思うけど、実際その過去が別の人のものであったら? でも過去から切り離されたい人にとっては過去なんていらない。 その人のルーツ、在日とか、そういうもので人を見るのではなく、ちゃんとその人自身、今のその人を見て判断すべきだと思う。 奥さん不倫してそうとすぐに分かりました。 あーあー、ずっと仲良い夫婦でいたいものです。

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