のりこ

2025年10月31日

圧倒的な恋愛小説 そんなフレーズを銘打って単行本として出版されたそうだ。 確かに結婚につながるまでの恋愛の過程を、様々な出来事を経て綴られたものだが、そこに浮き彫りにされるのは人間の心理の奥にあるもの。善良さと傲慢さとは背中合わせに人の中に混在することを丁寧に描き出している。 主人公の男性のほうは気のおける友人もたくさんいて、恋愛経験も多い。明るく屈託がない善良な人間である反面、どんな相手にも100%の評価を下せない中に、自信と傲慢さが見え隠れする。 女性のほうは、親や周りの人からすべて決められて育ち、自分から決断することができない。これまで失敗なく善きものに囲まれて育ったゆえに、知らず知らずに人にも同じ善きもの求める傲慢さが身についてしまっている。 そんな二人の恋愛過程の心理を丹念に掘り下げた名作。

傲慢と善良

傲慢と善良

辻村深月

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