chiii
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2026年9月8日

せおまいこさんの本の紹介で出てきた一冊だから借りてみた。医療の話は難しかったけれど、哲学の話も難しかったけれど、心に留めておきたいものがあった。 景色が変わる、そんなふうに捉えられるのは景色が変わるところをみた人だからだろうと想像する。それで言うと、石井先生が思いついた。「景色が変わっただろ?」「腹をくくれ」先生、おおきに。 スピノザについても興味がわいた。 人間はとても無力な生き物で、大きなこの世界の流れは最初から決まっていて、人間の意志では何も変えられないと言った思想家。 どんなに意志がつよい人でも、幾何学平面上の三角形の内角の和を、200度にすることはできない。 こんな希望のない宿命論みたいなものを提示しながら、スピノザの面白いところは、人間の努力を肯定した点にある。すべてが決まっているのなら、努力なんて意味がないはずなのに、彼は言うんだ。“だからこそ”努力が必要だと。 辛い話、、ではなく希望に溢れた論理展開と感じる。 人の出会いもまたそうであろう。意志の力でより良い人と巡り合えるというものではない。 願ってもどうにもならないことが、世界には溢れている。意志や祈りや願いでは、世界は変えられない。そのことは絶望ではなく希望なのである。 人は無力な存在だから、互いに手を取り合わないと、たちまち無慈悲な世界に飲まれてしまう。手を取り合っても、世界を変えられるわけではないけれど、少しだけ景色は変わる。真っ暗な闇のなかにつかの間、小さな明かりがともるんだ。その明かりは、きっと同じように暗闇で震えている誰かを勇気づけてくれる。そんなふうにして生み出されたささやかな勇気と安心のことを、人は『幸せ』と呼ぶんじゃないだろうか。 技術には、人の哀しみを克服する力はない。勇気や安心を薬局で処方ができるようになるわけでもない。 私たちにできることは暗闇で凍える隣人に、外套をかけてあげることなんだよ。

スピノザの診察室

スピノザの診察室

夏川草介

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