作品紹介・あらすじ
「さみしかったよね。私たち、それぞれ」生きあぐねた兄の軌跡を辿る妹の旅ーー。恐れていたことがとうとう起こった。関空に向かうはずの飛行機に兄は乗らず、四半世紀を暮らしたウィーンで自死を選んだ。報せを受け、葬儀とさまざまな手続きのために渡墺した妹。彼女に寄り添う、兄の同僚、教会の女性たち、そして大使館の領事。居場所を探し、孤独を抱えながら生きたある生涯を鎮魂を込めて描きだす中篇小説。
感想・レビュー (1件)
ウィーンのもつ歴史、人、文化を大使館職員とウィーンで自死した兄に会いに日本からやってきた妹のストーリーに載せて描いている。ウィーンでは死後の財産整理に半年とか長い期間がかかること、スリナムの環境汚染、オイディプス王の悲劇、杉原千畝のストーリー、Third manの話など、これといったテーマではなくその土地と結びついた話題が次々と出てくる。歴史、文化を知らないまま幸せに過ごすこともできると思うけど、どうせなら知ったうえで知るほうが人生に深みがでるような気がした。自分の周りを取り巻く環境で起こる出来事はちっぽけに見えて普遍的なものもあるのではないかと思った(例えば、ウィーンの人が、外国人をどんなに長く住んでも自国民と認められないこと。ウィーンは第二次世界大戦の敗戦国だけど、国内ではナチスドイツの支配から免れたポジティブな出来事として捉えられているという理屈で納得していること)。カリンという人、自分に近い人だと感じた。どんな時でも自分の信条を貫ける人って本当に少ないんだなって分かった。そのことが信頼を得る理由になるのは、周りの人の質が高い証拠でもあると思う。
