gegetom
gegetom

2025年12月6日

8か月の娘を風呂で溺死させてしまった水穂の裁判に、補充裁判員として参加することになった里沙子。裁判を傍聴するうちに水穂と自分を重ね合わせていく。わかる、子育て中の専業主婦の気持ち。社会に置いて行かれた感じ、どこにも所属していない不安。扶養家族という立場ゆえの夫への遠慮。里沙子は裁判を自分劇場として観覧するうち、次第に被害妄想がとまらなくなる。筆者の作品を読むたびに思う。筆者はなぜこんなに私たちのことを知っているのか。直視したくない内心を毎回突きつけられる。

文庫 坂の途中の家

文庫 坂の途中の家

角田光代

本棚登録:87