らいか
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2024年12月27日

小田雅久仁「残月記」読了。 大好きだった「本にだって雄と雌があります」の作者さんの待望の新作。あれから9年も経っているのか。 今回は月にまつわる3つの短編集。 そしてやはりこの人の小説は抜群に面白い。 「そして月がふりかえる」 あらすじも知らずに読み出したのに、書き出しの文章だけで不穏感を出すのってすごいと思う。そして怖い。この世界に迷い込みたくない。月を見るのが怖くなる作品。 「月景石」 上手い。導入の仕方とか、不穏な空気の作り方とか。胸の内にするりと入り込まれる。前半は亡くなった伯母の話で、現代劇なのに後半がらりとひっくり返される。果たしてどちらが夢なのか。 「残月記」 月昂(げっこう)という不治の病に冒されたもの達の話。月の満ち欠けに精神を左右され、優れた創造性を持ち合わせる者もいれば犯罪に走ってしまう者もいるため、差別され続ける者達の物語。グラディエーターを彷彿とさせるお話であったが、ラストよ。なぜ冬牙が仏像を彫り続けたのか。その理由に至ったとき...。月の鯨とともにいつまでも。 ああ、早く次のお話を読ませてください。

残月記

残月記

小田雅久仁

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