作品紹介・あらすじ
「月昂」と呼ばれる感染症が広がり、人々を不安に陥れている近未来の日本。一党独裁政権が支配する社会で、感染者の青年・冬芽は独裁者の歪んだ願望により、命を賭した闘いを強いられる。生き延びるため、愛を教えてくれた女のため、冬芽は挑み続けるーー表題作。「月」をモチーフに、著者の底知れぬ想像力と卓越した筆力が構築した、かつて見たことのない物語世界。本屋大賞ノミネート、吉川英治文学新人賞&日本SF大賞W受賞と...
レビュー (1件)
小田雅久仁「残月記」読了。 大好きだった「本にだって雄と雌があります」の作者さんの待望の新作。あれから9年も経っているのか。 今回は月にまつわる3つの短編集。 そしてやはりこの人の小説は抜群に面白い。 「そして月がふりかえる」 あらすじも知らずに読み出したのに、書き出しの文章だけで不穏感を出すのってすごいと思う。そして怖い。この世界に迷い込みたくない。月を見るのが怖くなる作品。 「月景石」 上手い。導入の仕方とか、不穏な空気の作り方とか。胸の内にするりと入り込まれる。前半は亡くなった伯母の話で、現代劇なのに後半がらりとひっくり返される。果たしてどちらが夢なのか。 「残月記」 月昂(げっこう)という不治の病に冒されたもの達の話。月の満ち欠けに精神を左右され、優れた創造性を持ち合わせる者もいれば犯罪に走ってしまう者もいるため、差別され続ける者達の物語。グラディエーターを彷彿とさせるお話であったが、ラストよ。なぜ冬牙が仏像を彫り続けたのか。その理由に至ったとき...。月の鯨とともにいつまでも。 ああ、早く次のお話を読ませてください。
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