匿名ユーザー
2025年9月15日
人間は、自分の顔、そして自分の姿を自分で見ることはできない。鏡や他人を通してしかその全体は掴めない。自分から見える一部から想像するしかないのだ。そう考えると不思議でならない。 ファッションは、自分をどのような社会に登場させるか、その社会的ディスプレイのスタイルだとも言える。 最近までファッションを語ることが 軽視され、冷笑されてきた。 しかし、コスメ、エステ、ボディメイク、美容整形をも含め、自然な自分の体型を苦痛を伴ってでも「理想のカタチ」にしたいという現代社会にあって ファッションもその重要なひとつだと思う。そう考えるとなかなか奥深い。 これからの「お洒落の基本」は、何になるのか? それは「ホスピタリティ」だと作者は語る。相手を歓待する気持ち。 団扇で風を送る、暑いのに呂や紗 の着物を重ね着する、話をするより聴いてあげる… お洒落とは、自己主張するだけでなく、他人の視線をどのようにデコレートするのか。そんな小さな思いやりがお洒落の基本になればどんなに素敵だろう。まさにパスカルの「繊細のエスプリ」となる。 ファッションに関わるしごとをしきた私にとっての意義を考えさせられる一冊となった。

ひとはなぜ服を着るのか
鷲田清一
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