ひとはなぜ服を着るのか

ひとはなぜ服を着るのか

鷲田清一
筑摩書房 (2012年10月1日発売)
ISBN:9784480429902
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作品紹介・あらすじ

ひとは服なしでは生きられない。流行に巻き込まれずに生きることもできない。流行(モード)という社会の時間と身体の感覚とがせめぎあうその場所で、“わたし”という存在が整形されてゆくのだ。ファッションやモードを素材として、アイデンティティや自分らしさの問題を現象学的視線から分析する。独自の哲学的なモード批評を切り拓いた著者による、ファッション学のスタンダードテキスト。

感想・レビュー (1件)

人間は、自分の顔、そして自分の姿を自分で見ることはできない。鏡や他人を通してしかその全体は掴めない。自分から見える一部から想像するしかないのだ。そう考えると不思議でならない。 ファッションは、自分をどのような社会に登場させるか、その社会的ディスプレイのスタイルだとも言える。 最近までファッションを語ることが 軽視され、冷笑されてきた。 しかし、コスメ、エステ、ボディメイク、美容整形をも含め、自然な自分の体型を苦痛を伴ってでも「理想のカタチ」にしたいという現代社会にあって ファッションもその重要なひとつだと思う。そう考えるとなかなか奥深い。 これからの「お洒落の基本」は、何になるのか? それは「ホスピタリティ」だと作者は語る。相手を歓待する気持ち。 団扇で風を送る、暑いのに呂や紗 の着物を重ね着する、話をするより聴いてあげる… お洒落とは、自己主張するだけでなく、他人の視線をどのようにデコレートするのか。そんな小さな思いやりがお洒落の基本になればどんなに素敵だろう。まさにパスカルの「繊細のエスプリ」となる。 ファッションに関わるしごとをしきた私にとっての意義を考えさせられる一冊となった。