作品紹介・あらすじ
優雅だが、どこかうらぶれた男、一見、おとなしそうな若い女、アパートの押入れから漂う、罪の異臭。家族の愛とはなにか、超えてはならない、人と獣の境はどこにあるのか?この世の裂け目に堕ちた父娘の過去に遡るー。黒い冬の海と親子の禁忌を圧倒的な筆力で描ききった著者の真骨頂。
感想・レビュー (1件)
ふたりの世界は誰もあいだに入ることはできなかった 理解もされないし、理解されたいとも思ってないし、ただ、そこにある関係性をふたりだけが知っている。 もしそのふたりを、つながれた関係を引き離そうとする人が居たら、それはなによりも許されない。 じゃあなぜ結婚し、出て行くことは許されたのか?親との関係性で悩んでいる男だったから? つぎの血を受け継ぐに値すると思われたから? 血のつながった母と心を通わせることができなかったから、その欠損を補うために血のつながりと心のつながりを求めた。 真っ暗な道をふたりで歩いて行くのは、ふたりだけで歩いて行くのは心細くないのだろうか。支え合いながら補い合いながら、いつまでも並んで死ぬまで(死んでも)歩いて行くのか。逃げているのか。血のつながりからは逃げられないのに。 「血が繋がってるんだから、いいじゃないか。気にするなよ」腐野淳悟 「いつもわたしは、この人を軽蔑したり、誇ったり、愛したり、恨んだりで忙しかった。」腐野花
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