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2022年12月6日

寺山修司 撃たれたる小鳥かえりてくるための草地ありわが頭蓋のなかに 燃ゆる頬 森番 蝶追いきし上級生の寝室にしばらく立てり陽匂いして 列車にて遠く見ている向日葵は少年のふる帽子のごとし 草笛吹くを切なく聞きており告白以前の愛とは何ぞ 煙草くさき国語教師が言うときに明日という語は最もかなし ふるさとの訛りなくせし友といてモカ珈琲はかくまでにがし 灯台に風吹き雲は時追えりあこがれきしはこの海ならず 日あたりて遠く蝉とる少年が駆けおりわれは何を忘れし またしても過ぎ去る春よ乱暴に上級生のシャツ干す空を 歳月がわれ呼ぶ声にふりむけば地を恋う雲雀はるかに高し 季節が僕を連れ去ったあとに 失ないし言葉かえさむ青空のつめたき小鳥撃ちおとすごと 遠ざかる記憶のなかに花びらのようなる街と日日はささやく 失ないし言葉がみんな生きるとき夕焼ており種子も破片も わがにがき心の中にレモン一つ育ちゆくとき世界は昏れて 祖国喪失 マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや

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現代短歌全集(第13巻)

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上田三四二

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