地上の楽園

地上の楽園

月村了衛
中央公論新社 (2025年10月21日発売)
ISBN:9784120059599
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作品紹介・あらすじ

取り返しがつかない。何もかも。北朝鮮に来たときからーー。 在日朝鮮人帰還事業。1959年に始まったそれは、人類史上最悪の「大量殺戮」への序章だった。 大阪に暮らす二人の若者、孔仁学と玄勇太が経験する「地獄」を通して、日本人の差別感情と、政府・マスコミらが犯した大罪に迫る。 エンターテインメント小説界を牽引する著者が、戦後最大のタブー「外国人問題」に切り込んだ、今最も読まれるべき社会派巨編...

感想・レビュー (2件)

たくさんの人に読んでほしい本。 何故こんな事になるのか全然理解出来ない。そしてまだその真っ只中に生きてる人がいる事実。 何をしていいのか分からない。なんで皆で助け合って生きていけないの とにかく差別が根源だということ。

北朝鮮の帰還事業については以前から興味があったため、巻末の参考資料は概ね読んだことがあった。 なので、作中の帰還事業に関連したエピソードについては、既視感がある(NHKの北朝鮮特集からのネタも結構多かった)。 この作品が令和の現在に問いかけるものは何か。 それはやはり、二次情報を盲信してしまうことの危うさであろう。 ソースが不明な情報が飛び交う現代において、しきりに警鐘が鳴らされていることではあるが、では、その二次情報を鵜呑みにした人々の最も悲惨な例は何かと言えば、この帰還事業以上のものを寡聞にして知らない。 そういう意味では、この小説のテーマは、帰還事業という歴史的に特異な事件をモチーフにしつつも、極めて現代的である。 違和感を言えば、大阪の公立高校に進学していた主人公の仁学が、大阪市立大学(現・大阪公立大学)を受験・合格するのはそんなに難しかったのか、ということ。仁学は心ない教師の言葉により大学進学を断念するが、大阪市立大学の入試は調査書(高校から提出)さえなんとかなれば完全なる学力勝負で挑めるはずで、しかも学費は大阪市内在住ならば格安、それでなくとも国公立大学の学費が馬鹿みたいに安い時代である。仁学に同情的だった教師の山崎がこの道を積極的に勧めなかったのは何故かと思う。 蛇足ながら、表紙にハングルで「地上の楽園(チサンナグォン)」とあるのだが、多分、この当時の北朝鮮式のハングル表記ならば「ナグォン」ではなく「ラグォン」になると思う(漢語の語頭のRがNになるのは韓国語の特徴である)。