作品紹介・あらすじ
昭和5年『放浪記』がベストセラーとなり、芙美子は念願の中国行きを果たす。翌年はシベリア経由で渡欧すると、半年余りをパリ、ロンドンで過ごした。小説を書くのは恋人が待ってくれているように愉しいと言いながら、「苦しいことは山ほどある。一切合財旅で捨て去ることにきめている」。旅を愛した作家の、愉楽の時を記す20篇。
感想・レビュー (1件)
1930年(昭和5年)放浪記がベストセラーとなり、その年、中国満州・上海旅行に行ったのを皮切りに、1931年シベリア鉄道でヨーロッパ、パリに滞在。1932年ロンドンに滞在。 その後も日本国内を旅し、まさに放浪した作家だった。 戦前の海外事情や樺太、シベリア鉄道など、今では経験できない情景が描かれていて、とても興味深かった。 それにしても当時の女一人旅がどんなに勇気のいることか、林先生の好奇心と勇気に感服するばかり。 言葉でなはく、相手に興味を持つ、相手を受け入れることが時代や人種に関係なく如何に大切なことか、良く分かる気がする。地球上の人間を理解したい、と言う林芙美子の情熱が感じられた。