作品紹介・あらすじ
第165回直木賞候補作、第34回山本周五郎賞候補作。「本の雑誌」2021年上半期ベスト10で第1位!
第9回野村胡堂文学賞、第15回舟橋聖一文学賞、第11回「本屋が選ぶ時代小説大賞」をそれぞれ受賞。
美しく生きるとは、誇りを持ち続けるとは何かを問う、正統派時代小説。
神山藩で、郡方を務める高瀬庄左衛門。50歳を前にして妻を亡くし、
さらに息子をも事故で失い、ただ倹しく老いてゆく身。残された嫁の志...
感想・レビュー (1件)
読み始めは、お正月に晴れ着の袖に腕を通した時の様な、ひんやりとするけれど、背筋が伸びる心地がした。読後感は、凛と張り詰めた冬の冷たい空気の中に一輪の梅が咲き誇り香しく匂い立つ春の訪れの様に思えた。定められた身を流されながらも、時に抗い、ままならなさを嘆き、悔い、罪を背負い、様々な想いを抱えつつも、不条理という刀をいかにして己という鞘に収めるか。人の世を生きるということは、こういうことなのかもしれない。