まみ

2025年9月11日

#トーマの心臓 #訪問者 #萩尾望都 プレミアムエディション版 生誕50周年+1年♥️1974年の作品で、ドイツの全寮制男子校を舞台にして、少年たちの心の交流を描く萩尾望都先生の三大名作です。うっかり記念日をスルーしてしまいました。 オタクが語ると長いんですけれど、高い文学性は大人になるほど、凄さにうちのめされます。 初めて萩尾望都先生を読むなら、この『トーマの心臓』と番外編『訪問者』をおすすめします。 読み終わる頃には貴方の心にも透明な傷跡が残ってる。 私の最大の使命は『トーマの心臓』を読みたくさせること。作文は苦手だけれど、愛を語ります♡ 🍂🍂🍂🍂🍂🍂🍂🍂🍂🍂🍂🍂🍂🍂 『トーマの“心臓”』とはどういう意味だろうかーー。 冒頭の文章は完璧な恋文。 ユーリに手紙を遺して13歳のトーマは死を選んだ。 この物語を何度も何度も読み、いつしか私なりの応えは見つけました。 . . . 頑なに心を閉ざす優等生のユーリ。ユーリや少年たちの不安や葛藤が少しづつ正体を見せ、共鳴・友愛・救済にいたる心が繊細に描かれています。 まなざし、深い悲しみの描写、緊張感のあるスミベタの背景、愛くるしい絵もとても美しい。風を描くのがお好きだという先生の表現力、新たな門出を象徴するラストシーンは見事だと言うしかありません。 . . . 子供の頃には漠然としていた事が、大人になって読んで気がつくこともあります。 キリスト教のアガペー(無償の愛)について描かれていること。 暗い影を落とすのが、出自にまつわる差別だったり、親の死、閉鎖的な空間で起こった暴力事件だったり現代にも通ずるリアルさ。 それでも、成長期の失敗は新しい自分を見つめることになること。 六角眼鏡のサイフリートの事件も衝撃でした。「すてきな黒髪だ」と言ってくれた上級生に、ユーリの心の半分は惹かれてしまうのですが誰が責められようか…。 描写は省かれていますが、暴行され満身創痍となったユーリは、自らをユダに例え、以前のように笑わなくなってしまった。 学校生活の中で、聖書を朗読しながら 神を、愛を、信じていないというユーリ。 それでも虚勢を張って優等生を貫こうとするその清濁さは、いっそ眩しいほどでした。 ユーリは僕には翼がないというーー。 でも不思議なことに、無断外出をして悲嘆にくれるエーリクに寄り添うユーリの背には薄っすらと「天使の羽」が描かれています。図書室の階段にいるユーリの背にも天使の羽がある。 少なくとも神様なんて信じないといいつつ、全体の流れを踏まえたうえで、心の交流をえてユーリの頑なな心が開かれてゆく兆しを表しているのかなと思いました。 萩尾望都先生の本当に凄いところは、人と人との繋がりを真っ直ぐに描いているところ。大人びた少年オスカーの父への愛情。きかん坊のエーリクの素直さ献身、あざとさは感じず全編を通して、少年たちの優しさが心にしみます。 . . . トーマの遺書の本当の意味に気がついたシーンは号泣。 トーマが自らの死をひきかえに与えたのは、他者救済。純愛。罪を肩代わりし他者の幸せを願う心。 (ユーリに翼を与え、魂を受け継ぐものとして生かすためにーー) 私なりの『トーマの“心臓”』とはそういう意味かなと思います。

トーマの心臓 プレミアムエディション

トーマの心臓 プレミアムエディション

萩尾 望都

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