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2022年11月6日
これまで十回以上読もうとしてはついていけずにいた本、とうとう読み切った。文体のリズムに乗れなかったから、ひたすら一歩ずつ進んでいてそういう読み方が合っているかもしれない。 水星の章がいちばん好きでそこだけ何度も戻って読んだ。戻るたびに泣いた。 ビーがコンスタントに「わたしを利用してくれてありがとう」「たとえ、わたしが利用されたがらなかったとしても」と伝えるところがあって、誰にも見出されず、誰からも信用されないのならたとえそれが望んだことではなかったとしても、されたいなと思う。 圧倒的なラストのためにすべてがあり、存在の善さとはまっすぐさだと思う。自分をよく見せよう、好かれたいという受動の飾りたてではなく、あなたのその素晴らしさのために、どうしようもなくしてしまう行為そのものだ。はじめて他者が立ち現れたときに生まれていたらいいなと思う、素朴な愛のために生きていきたい。
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タイタンの妖女
カート・ヴォネガット/浅倉久志
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