幻夜

幻夜

東野圭吾
読者数: 241
発売日: 2007/2/28
出版社: 集英社
ISBN: 9784087461343

レビュー (2件)

東野圭吾の名作『白夜行』の続編として銘を打たれた作品です。 1995年、水原雅也は父の葬儀を執り行っていた。通夜の夜を阪神淡路大震災が襲う。父の借金の返済を催促する叔父の俊郎を、雅也は震災の混乱に乗じて殺してしまい、そこを新海美冬に目撃されてしまう。雅也は美冬に黙認され、東京行きを誘われる。そして、2人は行動を共にすることになる。それは雅也にとっては地獄にも通じる旅の始まりだった…。 作品を通じて、白夜行に出てきた登場人物が、同じ氏名で出てくることはありません。読み進める過程で、読者は大きな謎を提示されます。それは新海美冬とは誰なのか?彼女の目的とはなんなのか、と言うミステリーです。作品では明示的には書かれていません。 黒子の位置、刑事の笹垣を思い出しているような言及があること、ハーモニーのケーキの話をするなど、『白夜行』の唐澤雪穂であることは容易に推測されるます。また、もし美冬が雪穂であるとするならは、作品内の辻褄が合ってきます。雪穂のブティックがバブルが弾けたために潰れ、彼女は借金を背負ったのではないか。そのため美冬に入れ済ましたり、美に傾倒するふりをして整形する必要があったのではないか、と。 それでも謎は残ります。 どうして美冬はここまで雅也に冷たくなってしまったのか。そして、本当に雅也に対して気持ちはなかったのか、桐原亮司に雅也を重ねることはなかったのか、など…。東野圭吾曰く、『幻夜』は白夜行3部作の2作目にあたるようなので、最終巻を待たないといけないのでしょう。 美冬の冷酷さがこの作品『幻夜』を彩っていますが、『白夜行』から続く作品の重苦しいトーンは健在で、そしてなぜか心を惹きつけて止まない物悲しさがあります。 東野圭吾の人気作品ランキングで上位にくることは無さそうですか、私はやっぱり傑作だと思います。

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