
レビュー (1件)
自分自身のことをここまで冷静かつ客観的に描いた人は、作家でもなかなかいないような気がする。 義母から「不幸な娘。お金の取れる女優」としか扱われない関係もバッサリ割り切っている。 そして、谷崎潤一郎、川口松太郎や梅原龍三郎などの作家や画家、東海林太郎に可愛がられたこと。杉村春子や田中絹代、成瀬巳喜男、木下恵介との交流など、貴重なエピソードも見逃せない。 これを読めば、戦前・中・後の映画界 のこともほぼ分かると言う年代物でもある。 秀子さんの頭の良さ、決断と思い切りの良さ、そして優しさを口だけではなく行動で表せる人間性が、周囲の人から可愛がられる要因だと思う。 独身時代、家庭には恵まれなかったが 子役の頃からの人間性を見抜く力で 周囲を惹き付け、幸せを手にしたのではないか。 それは、自分の運命を恨むのではなく、ただ受け入れ、カラッと笑ってその時にできることを精一杯やってきたからだ、と言う気がしてならない。 「明るい人」とは、こんな人のことだろう。明るくできるのは、そんじょそこらの生半可な根性では到底できないことだ。 尤も本人は「私には、そんな気持ちも時間もあるかい!ただ只管仕事に追われていただけよ❗」だとアッサリ言うだろう。なかなか読み応えのある作品だった。こんな自叙伝が書ければ最高だと思う。
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