作品紹介・あらすじ
「友おじさん、どうして人は色とかお金とかに目がくらむの?」
「人はいつだって、今の人生をとにかく変えたいと思ってるからだよ。」
下町で生まれ育ったキヨカは幼いころから、目に見えないものが見える能力を持っていた。中学生になって、ご近所に住む友おじさんが運営する「自習室」の空間を、その力で清めるアルバイトをしていた。そんなある日、母と離婚して家を出た父が、自殺未遂を図ったという連絡が入ってーー。人と違...
感想・レビュー (1件)
サイキックという特殊な能力を持っていることと、その能力をどう使うかは、まったく別の次元のこと。 吉本ばななさんの独特な世界観に触れて、「この人には、見えている世界が違うのだ」と、謎が解けたような気持ちになりました。 自分を育んでくれた【下町】という土地の、大らかさやいい加減さ、懐の深さ、単純さ、そして優しさ。 そうした背景があったからこそ、特別で少し一般的ではない能力を、「異質なもの」として扱うことなく、ごく自然に受け入れ、溶け込むことができたのだと感じます。 そんな環境への感謝と愛情が、物語全体にやさしく綴られていて、「今、この気持ちを記しておかなければ」と思わせられました。 しみじみと、人間への賛歌だなあと、あたたかい気持ちに包まれました。 私たちは、育った環境や出会った大人たち、学校の風土、親の生き方などから大きな影響を受けています。 そのすべてを“運命”として受けとめながら、「私はこの世で何をするために生まれてきたのか?」という問いを、人生という冒険を楽しむように味わっていきたい。そんな思いを抱きました。