邪魅の雫

邪魅の雫

京極夏彦
講談社 (2006年9月1日発売)
ISBN:9784061824386
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作品紹介・あらすじ

「殺してやろう」「死のうかな」「殺したよ」「殺されて仕舞いました」「俺は人殺しなんだ」「死んだのか」「-自首してください」「死ねばお終いなのだ」「ひとごろしは報いを受けねばならない」昭和二十八年夏。江戸川、大磯、平塚と連鎖するかのように毒殺死体が続々と。警察も手を拱く中、ついにあの男が登場する!「邪なことをするとー死ぬよ」。

感想・レビュー (1件)

京極夏彦「邪魅の雫」再読了。 最新作「鵼の碑」を読むための読み直しで始めた京極マラソン。やっとここまで辿り着いた。姑獲鳥の夏から始まり9作品。2年半かかったよ。 シリーズの中ではいまいち印象が薄かったこの邪魅の雫。確か毒が絡んだ話だったよなというぐらいだったのだが、読み直してみるとなんだ、しっかり面白いじゃないか。 前半はいつも通りというか、ダラダラと続く長い話なのだが、後半に入って徐々にテンポが上がり、ラスト3分の1ぐらいは一気に読んでしまった。 今回は関口、木場修、榎木津達がメインではなく、益田、青木達がメイン。まあ相変わらず関口くんは引っ張り回されはするのだが、引っ張り回すのが榎木津ではなく益田というね。 今作で印象的なのが、各章の始まりの言葉。「殺してやろう」「亡くなった」「死んでいる」「死にそうだ馬鹿野郎」「死のうかな」「殺したよ」「殺されるわけじゃあるまいに」「殺す以外にない」という風に意図的に死に関連する言葉で繋がっている。そしてその始まりの言葉だけなのに、ひと言で木場修だとわかるやつがあって面白い。 いつにも増して登場人物が多く、しかもあっちとこっちとそっちとの話が混ざり合うので、頭の中が、青木や益田が惑わされるように読んでいる自分の頭も混乱してくる。 いくつもの世間があり、それぞれの世間は閉ざされている。ひとつひとつの世間の話は単純なのだが、いくつもの単純が重なり合うと複雑になる。士郎正宗のアップルシードに出てくる「原理は単純を、構造は複雑を極め、人は最も人らしく」という言葉を思い浮かべてしまった。好きなんだよね、この言葉。まさにその通りだと。 そして満を持して登場する黒衣の男。 憑き物落としが始まる。 昔話。世間話。伝説。歴史と民俗学。 正史と稗史。記録と記憶。 そして訪れる切なさ。 あの人はどうするのだろうか。 1つだけ残念なのは、京極堂の邪魅にたいする妖怪談義がなかったことかな。 さて、とうとう鵺の碑に行くか、それとも百鬼徒然まで抑えるか。それが問題だ。