匿名ユーザー

2025年3月10日

大島屋の隠居小兵衛からの注文がどうやって新宮屋に来たのか、川並の建次との出会い。新宮行きの船中で知り合った水戸藩士三人。最後の買い付け交渉の場で祥吉は自分の素性を明かすが その人柄を信用され、建次からも水戸藩士からも咎められることなく無事に買い付けを済ませる。  江戸時代の船旅の困難さや江戸と新宮の違いや当時の賑わいがとても良く分かる。そして何より、どんな稼業をしていても堂々と自分の考えに従って生きていくことの大切さ。人間として大切にすること、潔い態度が人を動かす、と言うことが良く分かった。  ただ、小説として残念なことがある。前半の面白さに比べて、結末が少しみすぼらしく感じられる。道中、大次郎の素性がバレてくるところなどスリルもあり、建次が新宮に慣れていく場面や水戸藩士のエピソードなどとても納得がいき、一つ一つ感動できる。 しかし、水戸藩士三人がいかに命を掛けているかが理解できると言う説明の為に、祥吉が自分の素性を目の前で明かすのか? しかもどのように明かしたかは、詳しくは書かれていない。 祥吉がどれだけこの大仕事に思い入れがあるか、と言うことに繋がるのだろうが、動機付けにしては、私にはとても弱い感じがする。 少し、結末が残念な気がする。 (一力さんの作品には、こう言う傾向か少なからずある。忙しくて結末を急いだのかな?とも思ったりする)

いかだ満月

いかだ満月

山本一力

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