
シャケ
2021年12月29日
列に並んで前ならえができない。 それは、何かに違和感を感じてその正体を掴もうと、今は列から離れているだけなのかもしれないし、何かに夢中になって必死に追いかけている最中なのかもしれない。 いずれにしても、それぞれに固有の問いを納得しなくては、列に戻って前ならえができない人たちがいる。 現実の世の中の基準からみれば、一巡りして、はじめて普通の人と同じ水準に達することができるだけのことなのだが。 でも、実は誰でもそんな一面があったし、いつもは忘れているだけで、あるのだと思えてならない。 何食わぬ顔で列に戻って前ならえしている人もたくさんいる。 素直に前ならえできた人はそれはそれでいいのだ。 だけれど、素直に前ならえできない人もいる。 そんな〈子ども〉のための本書です。 しかし、世の中の人の自己意識が、〈子ども〉という自己意識よりはっきりしたものだと誰に言えるのだろうか。 〈子ども〉の様に、烈しい問いの襲来と戦わねばならなかった人は、それゆえにいよいよ研ぎすまされた鋭い意識を持つ様になるのだろうか、 それとも世の中の人は、正気のお蔭で、鈍い自己意識に安住しているのではないのだろうか。
〈子ども〉のための哲学
永井 均
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