金魚姫

金魚姫

荻原 浩
KADOKAWA (2018年6月15日発売)
ISBN:9784041058343
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作品紹介・あらすじ

恋人にふられ、やりがいのない仕事に追われていた潤は、夏祭りで気まぐれにすくった琉金にリュウと名をつけた。その夜、部屋に赤い衣をまとった謎の美女が現れ、潤に問いかける。「どこだ」。どうやら金魚の化身らしい彼女は誰かを捜しているようだが、肝心な記憶を失い途方に暮れていた。突然始まった奇妙な同居生活に、潤はだんだん幸せを感じるように。しかし彼女にはある秘密があった。 温かくて切ない、ひと夏の運命の物語。

感想・レビュー (1件)

自殺願望のある主人公と人間になる美しい金魚リュウの不思議な物語。リュウの謎と記憶をたどり東京から長崎へ。全ては繋がっている。巡る輪はいくたびも同じ場所へ戻る。憎しみを晴らすために生きてきた。信じたくなかった。憎むべき相手を愛してしまった。リュウは主人公を殺せなかった。一緒にいたかった。二度と人の姿には戻らず、金魚としてその生涯を全うする。しかし、実は主人公の息子の夢には現れた。楽しそうに歌を歌って。憎しむのを止め、主人公のそばにいた。江沢潤は黄昏時の紅に心がざわめく。遠くで異国の歌が聞こえた気がする。