2026年2月9日
いま、18世紀に生きたフランスの詩人であり小説家のビクトル•ユーゴーの『レ•ミゼラブル』について、フランス文学研究者の鹿島茂の書いた解説本を読み終えたところである。10年ほど前にNHK(地上波)で放映されたドラマを見て、どうしても忘れられなかった。感動があったからこそ原作を読破しようと若い頃から思っていたがそのままになっていた。幅広い知識と当時のフランス社会の動乱についての分析力と洞察力、ユーゴーに対する熱烈な愛を感じさせる文章は、静かに心に伝わり幸福感を覚える。まさに、大長編である原作(全4巻)を1冊にまとめ、より多くの人にこの本が読まれることを提示した著者の力量であると思う。勿論、全4巻を読むキッカケにもなると思う。 ジャン•バルジャンが悪と断ち切り、真っ当に生きようとしたのは、ミリエル司教との出逢いがあり、寝るためのベッドと餓えを回避できた食事を提供されたことが大きい。ミリエル司教の教えるキリスト教の教示にも心が入れ替わるほどの衝撃を受ける。それまでの彼の人生には、あり得ないような救い手になったわけだ。長い刑務所生活を送った身から考えれば、当然のように周囲からの差別に遭う。人間の温かみに触れるなんてことはない。ジャン•バルジャンは司教から銀の食器と燭台を与えられ再興の道を切り開く。 このあとファンチーヌ、マルユス、コゼット、ジャべール等の夫々との悲劇や葛藤、恋心や友情を通して背後には革命の内紛に奔走し、やがては死を迎える。私にとってさいご、ジャベールがセーヌ川の早瀬に飛び込むシーンは衝撃的であった。自分のそれまでの生き方に対して修復不能と悟った結果なのであろうか。人(ジャン•バルジャン)を信頼できた瞬間の時が死ぬ時であるとは何とも皮肉ではないか ! この本の増補として講演録を載せているが、これは素晴らしいものである。非常に分かりやすくて説得力がある。あらためて、著者に敬意を表したい。
『レ•ミゼラブル』百6景
鹿島茂
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