
響子
2026年7月15日
解説ではBLというジャンルの幅広さと可能性について述べられているので、個人的になぜこの作品が一般文芸として扱われているのか、しばらく考えてみた。 営業職の主人公・松岡が女装でストレス発散していたある夜、中年男に乱暴されそうになって途方に暮れていたところ、どんくさい総務の先輩・寛末に助けられる。 それをきっかけに、寛末に惹かれた松岡は自分の正体を明かさないまま女装をして、寛末との交流を続ける。 化粧映えする女装姿の松岡に惚れた寛末は、猛烈なアタックをするが、松岡が男だと知った途端、手のひらを返した様にひどい仕打ちをする。 寛末をあきらめようと四苦八苦する松岡に対して、これでもか!と空気を読まない寛末は、松岡の前に現れては彼を苦しめ続ける……。 身も蓋もなくまとめれば、そういう物語。 苦しいと解りながらも何故、松岡は寛末を好きでい続けるのか。 松岡は有能営業マンで知的かつ行動的。 所謂、デキる男だ。 片想いに酔うほど、本来なら頭は悪くないはずである。 そもそも恋愛とは苦しいものだ。 恋愛は理不尽なもので、決して答えはない。 ただ苦しい。決して楽しくはない。 その苦しさが全編通して描かれていて、苦しいと解りながらもズブズブと寛末を想い続ける松岡に、読者は 「ああ、こんな気持ちになったこともあったナァ」 とか 「こんな情熱的な恋を一度はしてみたかったナァ」 とか思わせる……ような気がする。 それは古今東西、文学のテーマとして扱われ続けた普遍的なものであり、本作が一般文芸として扱われる理由なのだと思う。
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美しいこと
木原音瀬
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