M•Y

2026年5月11日

ある本が出てから22年後に読むことにどんな意味があるのだろうか。10年も過ぎれば世の中はすっかり変わってしまうし、20年となると生まれた子が20歳になるほどに社会の事象も千変万化する。22年前に刊行された河合香織の著した『セックスボランティア』は、痛烈な衝撃音を伴って障害者の現実を舞台の袖から覗き見るようなタッチで描かれている。舞台の中心にいるのは知的障害者や身体的障害者であり脇にいるのは著者である。当時、この本を書店で見た時、ガーンと頭を殴られたような感じを受けたのは、タイトルの意表をつくネーミングであった。刺激的であり挑発的でさえある。 一読して、この本の凄いところは、障害者の性に対する思いを、間近に接し淡々と誠実に描き切っているところにある。インタビューする障害者を相手に、必要以上に神経質になることなく告白の実際を汲み取り静観している。そして、形通りの取材に終始していないところが素晴らしい。 書き出しの竹田芳蔵さんへの取材風景は誠に白眉である。しかも、最終章にも再び竹田さんとの悲壮な対話で締めくくられている。 一方、セックスボランティアというコンセプトを制度化しているオランダに渡り、その実情を取材するわけだが、オランダでは障害者にセックスするための助成金を市役所から出していると云う。日本では想像もつかない。オランダで出逢った障害者たちの貴重な体験を軸に、男性も女性もセックスに対する関心度は同じ位あるということを訴えている。世界中の健常者も障害者もセックスに対する関心度は同じ位あるのである。私は、障害者は関心はあまりないのでは ••• と思っていた。これには留飲が下がった。読み進んでいくに連れ知らないことばかりで右往左往することもあった。 総じて、この本は生涯に残す1冊として十分に値する本であると思う。

セックスボランティア

河合香織

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